当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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かんおけの綱吉 3

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その男は、白蘭と呼ばれていた。
彼が生まれたのは貧しい商人の家で、けれども幼いときから利発で頭の回転が速かった彼は、青年になるに従い、次第に業を担い、財を成し、周りのものから信を置かれるようになった。
彼はこの邦の、裏からの支配があるやり方に対して疑問を持っていたし、邦が本当の自治を取り戻せば、きっと邦は豊かに、より富むのであろうと、そう謳っていた。
大人たちは白蘭の考えを、あまりに幼く、恐れを知らぬ若造の夢想として、こぞって罵倒したり、進言したりした。
「お前はあの方への恩義を忘れたのか」
老翁は声を震わせていった。
「そのような―デーチモを化け物などと」
早くからその才を身近で見ていた両親も、極論に走りがちな白蘭の思想を危惧するようになった。
けれども若く、勇気があり、辛い毎日を送る若者たちにとって、白蘭の夢想はとても魅惑的であり
賛同する者は少なくはなかったのである。白蘭は自らの信念を貫く覚悟さえ持っていた。
「けれども僕は―化け物にすべられるこの地に―我々の自由を取り戻したい」
白蘭はあまりに潔白で、まっすぐで純粋な人間であっただけなのだ。



遠く西方のヴィシェフラッドのほうにも、他の地区にも、ボンゴレの兵が動く気配がないとわかると、白蘭はここしばらく張り詰めていた緊張感が少しだけ和らぐ気がした。
まだ、ボンゴレが動くまで、猶予がある。
財を成し、武器を密かに集め、謀反の用意をして数年、いよいよ、という契機に、白蘭は声を上げた。
賛同するもは、多くが若者。それでもその町の城に拠点をおくと、そこにいた人らの暮らしを守らねばならなくなる。
志願兵への炊き出し、くらしていた人々、女子供への脱走の補助、武器、食料に水の調達・・やることは無限にあった。財を成していた、と思うけれども、応援はまだない。いつまで持つのか。
「白蘭」
そばでユニが心配そうに声をかけた。
いつもそばにいる小さな少女は、その母親から、未来を視る力を得ていた。
行く末は必ずしも、幸せな結末ではない。そう少女は白蘭に伝えたけれども、それでもこの旗が、かならず、この国の長には届くだろう、そういった。
この少女にはいつも助けられる。
こうしてボンゴレに反旗を翻す者の末路は、ものの数日とたたぬうちに悲惨なものとなるのが慣例だった。
自分達の末路も近いのかもしれない。
それでも彼は声を届けたかったのだ。
「仮に、前例のような末路を僕らがたどるとしても、僕らはこの汚れた邦にも、未だ気骨がある者がいるということを、世界にも、ボンゴレにも知らしめてやりたいんだ。今は、かの南西にも、西の地にも、ボンゴレの利と富を狙い反旗を翻すものたちがちょうどいるだろう。ちょうど混乱しているさなかだからこそ、僕らはこの時に自由を求めて立ち上がるべきなんだ。法外な税にも―労働も―僕らが立ち上がることで、同じ様に苦しむ人たちが
、少しでもこの邦の愚かさに気付くのなら―僕らの犠牲も決して無駄ではないでしょう」
自分に言い聞かすような独白に、周りのものの、熱を持った、信を寄せるまなざしが集った。
やがて暁が来る。



何日たったか、終わりの見えない消耗戦に入っていた。
目の前に、邦の兵はいる。しかしその数は5千程度。こちらに攻め入ることなく、様子を見ている。
間違いなく、白旗を揚げさせるために、そこにいるだけだ、と白蘭はまわりの者へと言い聞かせる。

夜明け前、白蘭はうとうとと眠りに入ろうとしていた。
陣のうちでは安息は少ない。だからこそ眠れるうちに眠ることは必要なことだった。
けれどもずっと、良くない予感がする。
白蘭はふと目をあけた。
西のそらが――明るくないか?




敵襲―敵襲―
ごうん、ごうんと鐘が鳴らされる。
綱吉は火の海となった眼下を見下ろし、そして地上から飛んでくる爆弾やら弓やらを、燃やしながらあたりを伺う。
一万の兵は、寄せ集めの少年であったり若者ばかりだった。
だれしも恐怖を浮かべる中、それでも意思の感じる瞳。瞳。
憎悪の視線と、そして希望を望む目。これはただの不満から来ている造反ではなく、邦に翻意ある造反だ。
綱吉は手のひらを一振りした。
熱の余波を受けて、若者達が吹っ飛んでいく。
この中には、何かある。綱吉の直感は、ただしい。



白蘭は戦況を聞いて、歯を食いしばった。
どうしてこうも状況は一方的だろうか。死者が出ていないらしいことだけが唯一の救いで、陣は今のところたった一人に破られ、邦の兵はまだ遠くから戦況を俯瞰している。
黒衣のマント、金の細工、琥珀色の瞳で、焔を自在に操る―
若者達は身の凍る思いだった。今までの粛清は、曲がり曲がっても当主本人が出てくることなどそう、ない。
それもこんな田舎の謀反に・だ。
デーチモにしかゆるされない紋様が、示すのは、今ここにきているのがデーチモその人自身であることだった。
その人がこうも城を切り崩す。
焔が近い。白蘭は掌を握り締めた。
ふと、こんなところに花の匂いがした。
「そこの若造」
凛と通る声、振り返るとそこに、その人がいた。おぼれるような、花のかおり。
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by kanae-r | 2010-01-28 16:08 | parallel>reborn | Comments(0)