当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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04 在りし日

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「あ、これ」

届いていた手紙の宛名を見て、名前を見入る。
一読してのだめの顔が綻んだ。

「あかちゃんが生まれたそうですよ」

聞けば、いつのことだったか、まだ鳴かず飛ばすの頃に
お金が無い、と言っていつもパンの残りを分けてもらっていたパン屋さんだとか言う。

覗きこめば幸せそうな男と女と小さな赤ん坊が写り込んでいる。
「まだやりとりがあるんだな」
「そうなんです、テレビを見て思い出してくれたみたいで」

それなりに公演の場数を踏んで、
色々な媒体を通じて多くの人に知ってもらう機会が多くなったであろう彼女には
たまにこうした縁がある。

「物乞いしにいってたのか」
「お金がなくて」
「知らなかった」
「けっこう、工夫をしてたんですよ、食べ物の確保と保管」
「自然発酵するだろお前の場合」
「生きていくのが大変で」
「いつも世話してただろ」
「そうでしたか」
ふふ、と笑ってから、すこし笑顔に影が籠る。
「あまり、会っていませんでしたからね」
髪をくしゃっとなでると、笑顔が蕩ける。
「飯、出来た」


わーい、と子供のようにテーブルの上に乗ったあたたかなスープと、ほかほかしたパンをみて輝く目。
そしていただきまーす、と肉をほおばる、その頬。

最近は忙しかったようで、その目に下にうっすらと隈がある。

いつまであるかわからないけれど、
いつもここにあるとは限らないけれど、
今この瞬間ここにあって、二人で囲んでいるのは、あたたかい食卓である。

その距離感で、バランスを取っているのだと、千秋は思っている。
欲しいものは届かないくらいがちょうどいい。
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by kanae-r | 2012-09-02 00:19 | 届かない5題>n | Comments(0)