3 うとうとと 微睡むきみに 告白を
2004年 12月 31日
「えへへーたのしかったぁー」
赤い顔で何度も何度も繰返す彼女。酔いは相当回っているようだ。
ろれつが怪しいし、第一満足に歩けない。
よいしょ、とシングルベッドに横たえると、ふにゃり、とした笑顔を見せた。
「せんぱいーたのしかったー」
今日の演奏会のことを言っているのだろう。初めてのコンツェルト、同じ舞台にいつか、と言っていた夢が叶った、と大喜びしていたから。
もちろん千秋だってずっとずっとこの時を楽しみにしていた。自分の初めてのピアノコンツェルトは、シュトレーゼマンの世界公演の時。少し、とっておきたかったというのも事実だ。
彼女はふふ、と幸せそうに笑う。
「また、やりましょうネー すごいたのしかったデスー」
「うん」
のだめは手を伸ばし、千秋の首に巻きついてす、と引っ張る。千秋は重力に従ってのだめの横に落下した。至近距離では少し酒の匂いをさせて、紅潮した頬は幼さをかもしだすよう。
触れば、ふにという音がついてきそうな頬だなぁとおもう。
のだめがふにゃりと笑う。
「せんぱい だいすきー」
そのまま千秋の首もとに顔をうずめてしまう。きれいなうなじが見えた。
栗色の柔らかな髪の毛が顔に当たってくすぐったい。
やがて、すうすうという規則正しい寝息が聞こえた。
千秋がそうっと、彼女の肩に腕を回す。
「・・・うん」
ぎゅうと抱き寄せて、千秋はうっとりと目を閉じた。
「俺も」
by kanae-r
| 2004-12-31 02:00
| 言葉で綴る漆題-其の弐>nodame