当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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7 もう一度 廻りはじめた 蒼い夜

千秋ははぁ、と息を吐き出した。白く白く息が消える。パリの夜は深いが今日の満月は煌々と光り、川の水面はきらきらと光って、街には月の影が出来るほど。
長袖一枚で外に出るにはかなり寒い。それでも何となく外に出たのは雲が途切れてきれいに月が出たから。
のだめは今日帰ってくるということだったが(正確には昨日)もう深夜だから、きっと明日(正確には今日)帰ってくるのだろう。今日(昨日だが)は千秋が迎えに行けなかったし明日も行けないので少々残念に思う。それでも自分が帰ったらお帰りと言ってくれる存在のあることをとても楽しみにしていた。
のだめに会うのは本当に久しぶりだ。彼女は変わっただろうか。もうすぐ会えると思うと、柄にも泣く千秋は幸せな気分になるのだった。
それとも、俺は変わっただろうか、成長したのだろうか。地道な試行錯誤の日々が続く。それはとてもそれで楽しいことだけれど、”楽しい”で終わらないのが音楽の道だ。
一生かけても報われないかもしれない。それでも俺は全力をかけたいのだ。
そもそもパリへ連れてきてくれた、大切な役割を果たしてくれた彼女。最初は本当にピアノにしか興味がなかったけれど。ずかずかと、するりと、いつのまにか俺の深いところへ入り込んで、窓を開けて風を入れてしまった。気づいてみれば、手放せない大切なパートナー。今頃はパリの宿を取っているのか、あるいはまだウィーンか。
車の音が遠くから近づいてくる。夜の街には必要以上に響いた。
深く息を吸う。冷たい空気は肺のおくにまで沁みわたった。
車はタクシーだった。ライトが近づいて、アパルトマンの下で止まったのであ、と思う。
それでも乗客はなかなか降りない。誰だろうと思っていると暫くして運転手が降りてきて後部座席のドアを開けて、それから、栗色の髪とワンピースコートの。
「のだめ」
思わず呼ぶと、驚いたように彼女は上を見上げた。そしてすぐに破顔する。
「せんぱい!」
声に出てるうれしそうな顔。髪は少し伸びたのか、少しだけ大人らしく見えるような。
運転手がのだめに荷物を渡して、車に乗り込んだ。千秋は部屋にとって返し、玄関のドアをあけて階段を降りる。ゆるい螺旋の下には蒼い夜が待っている。
外の空気が蒼い。その中にのだめが立っている。待ち焦がれた彼女は駆け出した。深夜二時、新しい楽章は今始まったばかり。
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by kanae-r | 2005-01-08 18:21 | 言葉で綴る漆題-其の弐>nodame | Comments(0)