当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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フランスの朝の寒い日の夜明け頃のこと

フランスの冬はどこか日本と違った。キンとした冬の朝は身も引き締まるようで、それは何故かと思ったらベッドカバーが剥がれ落ちていたからだった。さむい。さむい。もう布団のバカー。
のだめはぶつぶつ言いながらのそりとベッドから這い出る。(隣人の手が入って)日本よりもずっとキレイなのだめの部屋はまだ暖房がついていなかった。東京に出てきて気づいたことは、自分がつけなければ部屋は暖まらないということ。ひやりとしたフローリングはぶるり、と体に寒気を走らせる。夜明け前、パリの朝は本当にさむい。
服を着替えて、コートを羽織って、マフラーを巻きつつ外へ出る。階段の音が妙に響いた。
人通りは無くて、道は閑散としている。空は白々してきた。川沿いに歩く。人はいない。ベンチへ座る。空を見上げる。息を吐く。吸う。吐く。吸う。
「のだめ?」
どれくらいそうしていたか忘れたが、声と共に、視界が人の影でさえぎられた。自分が良く知る隣の部屋の住人だということに気づくのにおよそ三秒、千秋先輩、と言葉を返すと、自分を覗き込む眉が眉間にしわを寄せた。
「お前なにやってんの?」
低血圧のくせに珍しい、と本当に珍しそうに言う。目がさめまシタ。そういうと眉を寄せただけだった。千秋先輩こそ早いデスねランニングなんて、と返せばまぁな、と返事があった。
体力づくり、だなんてこの人は本当に努力家だ。自分にはまず出来そうに無い、そう思ったことを伝えるとフンと鼻先で笑われた。そんなこといってるけどお前の体力もなかなかじゃないか。彼は言う。
「なんで?」
問えば、ほらハリセンとの追いかけっこ昔やってただろ、と。
懐かしい恩師(恩は仇で返していないか甚だ心配だけれども)を思い出す。
でもあれは火事場の馬鹿力ですヨ。うそだろ8.4km。うそじゃないデス。
空は青い。つきぬけるような青さの朝だ、とのだめは思った。
「先輩もう帰るんですか?」
そう問うと、ん、と答えがあった。じっと顔を見てくるので、のだめの顔何かついてますか?と聞けば、いいやと答えて身を起こした。
帰るか、と自然に手を差し出すので、自然に手を握り返す。手の温かみを感じながらほんのりと思う。日本に帰ったらこういうことはしてくれないだろう。
走り終わった後の千秋の手はあたたかい。どくどくと脈打つ音が聞こえてくるよう。峰クンと清良サンもいつかこうして帰ってましたネ。のんびり言うと、そうだな、という笑い含みの返答があった。
おなかすきまシタ。 でもまだ六時なんだけど。 えっそんなに早いんですか?二度寝しようかなぁ。 風呂にでも入ってろよ。どうせ昨日入ってないだろ。 そんなことアリマセンヨ。 目そらすなよ。
くつくつ笑う彼からは優しささえにじみ出ていることに少しずつ気づいていた。昔の、氷のような視線はもうなりを潜めている。のだめは不意に当時を思い出して。そしてそれを最後に見たのはかなりかなり昔だということに気づいた。
フフフと笑うと、気持ち悪い笑い方すんな、と厳しい言葉。
のだめはなんだか幸せな気分がして、少し上機嫌になった。
フランスの朝はこんなにも寒いけれど、こんなにも優しい。
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by kanae-r | 2005-02-07 23:53 | ss>nodame | Comments(0)