当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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無題 b

深夜の公園には冷たい風が吹いていた。けれどもぽっかりと浮かんだ月があまりに近く、私は寒さをあまり感じなかった。
コートは着ていなかったし、手袋もマフラーもないし、あまりに何も無かったから私はとても軽々とした気分になる。
古いブランコがあったので乗ってみると、きしきしと金属の錆付いた音。
何となく楽しかったので私はゆっくりとブランコをこぎはじめた。
その古いブランコは私に子供の頃を喚起させる。何もかもが暖かく、自由気ままにいた頃。
緑の草の匂いと、夏の風と。母の作ったワンピースはブランコに乗るとはたはたとはためいていた。楽しい友達、先生、ピアノ。そう、キラキラした思い出。
ひとこぎ、ふたこぎ、こぐたびに私の心は軽くなった。風が耳をきる感じとか、かじかんできた手とか、あの頃と変わったものなど何一つ無いのだ。
「のだめ」
凛とした声。
見れば息を切らした様子の千秋先輩がいた。
「・・・ごめん。遅くなった・・・うちに帰ろう?」
すまなそうに顔をゆがめる。差し出された手は、大きい。
私はこぐのをやめて地に足をつく。
「・・先輩寒そう」
先輩もコートもマフラーも、何も防寒していなかった。ひゅと風が吹いて、黒の髪が揺れる。
立ち上がって歩くと砂利の音、私は先輩のところまで行き、見上げる。
漆黒の瞳が私を映していた。
「ごめん」
言った時のその目が寂しそうな感じだったから、私は先輩の手をとった。
「帰りましょうヨ」
ね、と笑うと、千秋先輩はほっとしたように、うんと言った。
先輩の手は熱かった。ひやり、とした。
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by kanae-r | 2005-02-16 20:41 | 連>nodame | Comments(0)