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当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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02’ "the Swordsmen's Dance of Haratai Kenbairen". "Star-Circling Song"'







翌日の夜には、綱吉は治療室から帰ってきた。
二人のために準備されたプライベートルームは、普段は顔を合わさないことも多い二人のために、寝起きをする時くらいは、と綱吉の右腕が慮って準備してくれたものだ。
ドアの向こうで、それでは、と右腕が去っていく気配が聞こえる。
時刻は深夜。今夜は出勤しなくてもよい、とヴァリアーの幹部連中から言われて、それでザンザスは強制的に休まされた。
重厚な扉がぎい、と開き、亜麻色の頭が開いて―
「ただいま」
ぼすり、とザンザスが腰かけていたソファへ、綱吉が飛び込んできた。
部屋の嗜好は、どちらかと言えば、綱吉の趣味というよりも、ルッスーリアや獄寺のチョイスによる者が大きい。それでも安全のために、と獄寺がひそかに仕込んでいたカメラや発信器などはポイポイと捨てられ、プライベートは完全に確保されている。
一流の職人たちが、丹精込めて作った特注の調度品は、体の大きなザンザスにも安心してくつろげるサイズであった。
「・・・つかれた」
「仕事をしていたのか」
「うん、今朝から復帰」
綱吉は子猫のように、首元にぐりぐりと顔を押し付ける。
「リボーンにねっちょり。すごい嫌味言われてね、獄寺くんは慮って内勤にしてくれたんだけど」
「そうか」
手元のグラスをサイドテーブルに起き、柔らかい亜麻色の髪をくしゃりと撫でる。
「きのう、ありがと」
「・・・」
怒ってる?と綱吉は首をかしげてザンザスの瞳を覗き見た。ザンザスは怒っている。
そういえば、昨日の治療室以来顔は合わせていなかった。
明日早朝には綱吉からの招集が幹部にはかかっているため、おそらく今夜中にはボンゴレの屋敷に幹部が集まってくるはずである。
するする、と衣服を剥がして、昨日大きな穴のあった脇腹を掌でたどる。
晴の力とは偉大なもので、そこはいつものように、やわらかい陶磁器のような滑らかな肌があった。
少し体を離し、綱吉の瞳の状況を確認する、と、
疲れた声に反し、めらめらと、そこに絶対零度の炎が燃えていた。
(・・・こいつこそキレてる)
思った声に、そんなことない、と綱吉が応えた。
ぼすん、と綱吉はザンザスをソファに押し倒し、馬乗りになる。
穏やかな顔に―ザンザスにとっては凍え上がりそうになるが―近しい者にしか分からないかもしれないが、絶対零度の瞳が怒りで燃えている。
がり、と噛みつくように唇を合わせて、にこ、と笑ったかと思うと、綱吉は安心しきって、すぅすぅ、と寝息を立て始めた。
はあ、とザンザスは溜息をついた。溜息が習慣になりそうだ。まずはベッドへ運ばなければ。






シーツの白い海の中で、ゆらりと綱吉の瞼が震える。ぼんやりとその焦点が結ばれるのを待った。
おはよ、という綱吉の声に、小さく挨拶を返す。
ふわりと笑った綱吉の瞼に口付けてやれば、貧相な腕がザンザスの身体に巻き付いた。
心配した?と綱吉が問う。応えは口に出さなかったが、伝わったらしい。ごめんなさい、と自ら謝ってきた。
「昨日は疲れててよく、わからなかったけど、怒ってるよね?」
「説明しろ、納得できん」
ザンザスの飾り羽は、サイドテーブルの上だ。耳の上に掛かった髪の毛を綱吉は弄りながら、(その瞳がすごく、優しそうなのでザンザスはいらっとした)うーん、と答えを探すように唸った。
「今日みんなに、話そうと思うんだけどね」
前置きしてくる。嫌な予感しかしない。
「おれ、やっぱりリボーンのこと、たいせつなんだ。弟みたいなものでさ、守らなきゃって思うし、それはバミューダも同じくらい、たいせつなの」
ザンザスの嫌いな夜の炎に似た色が、綱吉の瞳にも浮かんでいる。
「だからさ、喧嘩売られると買っちゃうんだよね。手を出されると腹がたつし、ただ潰して終わりじゃなくて、完膚なきまでたたきのめして、二度と誰もそんなことを考えようと思わないくらい、つぶしたい」
わかる?と首を傾けるその姿はひどく愛らしいが、ひどく物騒なことを言っている。ボンゴレその人の意向なので、ザンザスはただ、Si、とだけ答える。


昼になって、ボンゴレの屋敷の中でいちばん大きなその部屋に召集された者は、部屋に入るなり、守護者とヴァリアーが既に一堂に集められていることに驚いた。
年に一度の―綱吉の誕生日を祝う趣味の悪いパーティであっても、全員が会することは無い。
表に立つ守護者と、裏で暗躍するヴァリアー達―集まれば当然、ぴりぴりとした雰囲気になる。
若い構成員はその空気に、既に額から汗が噴き出している程であった。伝説視されてきた者たちの姿もあった。むしろこれから殺されるのかとも思った。
沈黙を破ったのは、彼らの主の柔らかな声。この場にそぐわない中性的な声だ。女にしては低く、男にしては高い。

「これからこれらのファミリーと同盟を締結します。リストを見て。同盟に同意しない場合は、強制的に吸収します」

綱吉がスクリーンに出したリストは、由緒正しい歴史あるマフィアから、今はほとんど活動内容のないダミー会社、未だに一大勢力を誇っているカジノの運営会社と様々だった。友好関係のある組織も、敵対関係の組織も、国境も関係ない。むしろイタリア国内にはあまり縁の無い所も多い。

それでもひしひしと感じる大きな戦の匂い。
もともと、こんな組織にいるくらいだから、根っから戦うことの好きな者たちばかりだ。
戦の匂いに色めきたっているのが伝わる。



「基本的には、殺すな、交渉しろ。交渉でどうにもならない場合は、力技になることは否めない。但し、いずれおなじ家族になる者たちだ、殺して資産価値を落とすな。わかるな?減給で済むならいいが、落とした分だけ馬車馬のように働いてもらうぞ」
綱吉が穏やかに言う。
交渉で?と俄かに場は緊迫感を持った。まだ力技の方が楽だからだ。
綱吉の表情は伺えない。チーム分けはこうだ、とスクリーンの画面を変えた。












ザンザスは綱吉の雨の守護者と、同盟を組んでいるシモンファミリーと同じ現場にあたった。結局、交渉は決裂した。罰則が怖いとか言い出すメンバーは一人もいなかったから、この辺は綱吉や右腕も承知の上だろうと勝手に解釈する。誰かの掌の上で踊るなんて真っ平だと思っていた。誰かの指示で動くなんて。俺は俺だ。自分の意思で全てを決めてきた。
何処かで爆発音がする。
とりわけ、戦になるであろう、という予想のあった敵対ファミリーとの交戦。吸収するためには、組織の誰を生かさなければならないのかだけ認識をしておかなければ。若い構成員だけは綱吉による罰を戦々恐々としているようだったが。
きらり、と刃が地上を踊る。雨の守護者は何も考えてないような平和な間抜けヅラをしているようで、間違いなく狂っている男だった。カス鮫と仲が良く、稽古をよくしているようだ。彼らは完全に生まれてくる時代を間違えている。嘗て日本であっても西洋であっても、カス鮫やこの男が使うようなブレードは戦の場でスタンダードだった。

今は遠い、遠い場所で、血が怒りと興奮で燃えているのを感じる。興奮しているのは自分だったか?わからない。綱吉は今この国にはいないはすだ。
きらり、きらり、刃の光と、爆発の地表の轟。目を細める。こんなに遠くて感じるのは気のせいか。夜の星の煌めき、炎の赤。ビルの上から見下ろすザンザスのこの景色を覚えていようと思った。美しいものの話をすると、綱吉は喜ぶ。イタリアとは異なり、空気はつんと冷たく、星々の瞬きが何処か馴染みない。美しい夜だ。オーロラというものをザンザスは初めて見た。誰かの叫び声と銃撃音。抗争の激しさが増していく。

by kanae-r | 2014-02-08 18:52 | IHATOV>r ♀27