当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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気の毒な不義の子のこみいった物語





ザンザスはそもそも守護者や家庭教師、ボンゴレの組織の人間のことを信頼していなかった。
だからこそ、ヴァリアーの隊員を自ら集めてきたのだし、いつでも組織から離れられるような、独立した部隊として、活動をしてきたのだった。
綱吉にかつて襲名争いで敗北したことを考えれば、今となれば、綱吉そのものに大きな意味があるので、あって、
綱吉そのものに意味がなくなれば、それはザンザスにとってボンゴレにいる意味を無くすることとなる。

つまり、一方で、とても執着していた。



「おい、マーモン」
飛んできた酒瓶を避け、投げないでよ、と不満を露したのはマーモンだった。
「しばらくあの馬鹿のところにいって来い」
呪いが解け、すくすくと大きくなったが、まだまだ7歳である。年相応な生活をしているか、といえば、相変わらず暗殺部隊に所属していることを望んでいた。
「・・・いいけど、調査料金は経費として請求でいいよね」
好きにしろ、と答えると、上機嫌でマーモンが部屋から姿を消した。

翌週、よくまとまったボンゴレ十代目を取り巻く諸々の直近情勢(と請求書)がザンザスの所へ届く。
ぱらり、とレポートを捲る。

焼け焦げた戦場、銃撃戦、そして死体の跡がないということ。
襲名し、成人するまでの間、家庭教師が綱吉に、修行と称して様々な課題を与えていたことは知っているが、その課題が未だ残っているらしいこと、その内容については秘密裏とされていて、守護者もあまり把握していないらしい。
レポートに添付された明らかに盗撮とわかる写真には、薬をやっているわけでもないのにトんでいる綱吉の目線が向けられていて、写真を撮るものに気付いているようだった。その左手にはナイフ、右手には誰か男らしき頭の髪の毛を掴んだまま。ナイトドレスがやや着崩れて、顔はアルコールで上気している。眦が垂れ下がって、明らかに挑発的な笑み。

ザンザスは強い酒をあおり、目を閉じる。













「綱吉」
その日は雨だった。
本部からの言い付けで、わざわざ戦場まで迎えにきてやったというのに(炎に巻かれて一般人の手には追えません!と部下が泣きついてきたそうだ。あとで肉と酒を揺することを条件にザンザスは暇潰しを得たのだ)
死体のように身体が冷え切ったまま、殴るようにして襲い掛かってきた綱吉に、
その小さな身体を殴り返し、蹴り返し、綱吉の気の向くままに一通り肉弾戦をしたところで、
その琥珀に燃える瞳は、相手を殺さんばかりに殺気で満ちている。瞳孔が開いていて、ザンザスは口角が上がってしまうのを感じた。

本来の望みどおりに、一通り熱を発散させてしまえば、綱吉が、額からぼう、と炎を出して、先程までの殺気を嘘のようにしまい込み凡庸な顔になる。阿保らしい。
炎のコントロールが自分で出来ていない。
熱に浮かされたような顔をして、ザンザスを睨み付ける。
「視るな」
身体が言うことを聞かないのか、睨み付けるだけで、そこから拳は飛んでこない。まるで泣きそうな子供だ。

おかしくなって、ザンザスは哂った。
「・・・気を許しすぎだろう、殺されるぞ」
綱吉は面白くない、という顔をしたが、ふんと鼻で笑った。
本望だ、というように。ぽろり、と一粒眦から滴が垂れたのか、雨だったのか。

身の守り方を家庭教師から学ばなかったのか、と問えば
身体が少しこわばったのを視て、まだまだ半人前だな、とこぼす。
その通りだよ、と優しい声で綱吉が答える。






炎は収束せず、苦しそうな息を上げる。嘗て自分も経験があるが、炎に負けて体力を根こそぎ奪われたことがある。
このまま放っておけば死ぬだろうな、とも思うと、
自分がこのどうしようもない弱い生物に負けたことに、改めて怒りと憎しみがこみ上げる。

「こうなることを誰かに伝えているのか」
「・・・伝えるものか」
綱吉が哂う。人を殺してこんなになるなんて、情けない、と。
「・・阿保か」
「・・お前に言われると新鮮だな」

まだ十代の体は若く、しなやかで、本来女性であればつけることができる、柔らかい丸みをつけることが許されぬほど、鍛え上げられていて、小さな傷は数え切れないほどついていた。
それでも日本人特有なのか、イタリア人にはない、白く、乳白色の、淡くて陶磁器のような透明感の肌がシャツの合間から見え隠れする。
雨の滴が零れている。
雫をたどるように、つ、と指先で辿ればびくり、と身体が震えるので、
それはどちらかといえば、綱吉にとっては恐怖による反射だったのだけれど、
ザンザスは気を良くした。感覚が伝わってくる。恐怖と、すこしばかりの情欲が。


要するに、綱吉は追い詰められている。
綱吉も、そしてその家庭教師も、思っている以上に。









「死、というものは平等だ」
ザンザスが言うと、息も絶え絶えに、綱吉が目線をちらり、と向ける。
「・・・遅かれ早かれやってくるものだ、と思っている」
「それでもさ、死の瞬間は自分で掴むものじゃないのかな」
「・・・」
ふ、と綱吉が哂った。
「―ザンザス、俺を励ましてくれてるのだね」
また、ゆらり、と炎が揺れた。





じゅう、と手のひらを炎にかざすと、
手のひらが冷たくて気持ちいい、と綱吉がうろんな目で、猫のように擦り寄ってきた。
意識が浮いたり、沈んだりしている。
綱吉が信頼を預けて、無意識下にいるのだ、と思うと、
いつでも殺せるのに殺さない自分に気付き、自覚をする。



「綱吉」
「何」
「あとで書類を寄越すので、認可をしてくれ」
「・・・珍しい」
綱吉はザンザスの瞳の色を図りかねた。
今まで見たことのない色をしていた。











ザンザスは、自覚した。彼が望むのはボンゴレである。それも強く、隙のない、完璧なボンゴレでなければならない。一度の己の敗北を無かったことには出来ず、しかしその上でこのボスは凡庸で弱い。
ただ殺して奪うには惜し気もする。
今の自分のこだわりは、ボンゴレの組織ではなく、綱吉そのものに入れ替わっている。己は欲しいものは何でも手に入れるのだから、ボンゴレを手に入れるということは、この凡庸な東洋人を手に入れるということでもある。一度己を負かした東洋人が、弱くてはならない。

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by kanae-r | 2014-02-12 04:38 | Alf Laylah wa Laylah | Comments(0)