当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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gemini





最初に花を手折ったのは、隣国の彼女の同胞だった。
近くで一部始終を見ていた景麒は、
怒りや憤りなどという次元ではなく、諦めに似た心理に彼の人がなるのを痛切に感じて、
もはやその心が何処にも寄れずに手が届か無いことを知って
自身の利己の為にでは無く、彼女の心が少しでも、楽に、救われるように、働こう、と思った。

彼がそう動いていることを知ってか知らずか、
景麒が誰よりも大切にしているその主は、いつもありがとう、とぽつねんと呟いた。

新緑が芽吹く初夏。
春から夏に移り変わるこの季節は、
景麒にとって、様々な過去を想起させる。
四阿にしどけなく手足を投げ出し、
春から初夏に向かう、きらきらとした光が、
長い睫毛や、滑らかな肌に載って、転がり、光っている。
紅く燃える髪を梳く役割を賜って、(無茶振りは辞めて下さい、と彼は抗議したが、聞き入れてはもらえなかった)それでも、間違えても抜いたりしないように、丁寧に手の中の絹の手触りを、少しだけ堪能する。
毛繕いをしてもらう猫や犬のように、無防備にうとうと、としながら、彼の主は、惰眠を貪る。

一度心の臓を掴まれるかのような、そんな喪失感を知っていると
恐怖ばかりが増幅される。

幸福の裏側にある、喪失感に対する計り知れない恐怖に怯えている自分を自覚したことを
彼の主は察知したのか、
お前、怖いのか、と問うた。
はい、と素直に答えると、くすり、と手の中にある温かい王気が震える。
かつて、彼が感じた王気は、温かく、きらきらした、陽光のような存在だった。
心が踊る時にはきらりと光り、
楽しい時には温かく、
怒りを感じた時には熱く、
悲しい時には少し空気も湿ったように、
主の様子が、空気に伝播して彼にも伝わった。

かつて、そんな話をしたとき、
魂が何処か、繋がっているのかもね
そう、彼女は嬉しそうに笑った。

高嶺の花は手折られない、そんな幻想を彼も金波宮も、持っていたのは事実である。

それでも、彼女は少女の若さを保ったまま、王になった。
誰かが死ぬ度、彼女に怨疎が乗し掛かる度、ぽきりぽきりと何かが折れて、傷付いていく。
傷はやがて瘡蓋となった。
温かい光や喜怒哀楽に溢れていた光が、年々と、硝子の様な透明感と
きらきらした光ばかりが強くなって
温かい、とは別の人間離れした神々しさを持つ様になっていく。

それは傷が瘡蓋を作って守るように
感情が硝子の織に守られて行く様子に似ていた。

余りにもきらきらとしているので、
景麒はただただ眩しく感じていたが、
徐々に少しだけ、彼女の心が遠く離れていくようで、不安になる。
年々と王らしく、彼女からの威厳や覇気といった類のものが、国民を引きつけて、束ねて行く様子を見ていると、
益々赤王朝は盤石になる、という臣達の声の通りだ、と思う一方で、
少しだけ誇らしいような、哀しいような気持ちでいる。


だからこそこうして、魂の片割れ(かつて彼女はそう言った)が、
空っぽになって、自分の隣にいてくれることが、何より嬉しい。
指の先でつい、と傷のついた掌から、腕を辿ると、
かつて感じた、じんわりとした温かさが
指先から伝わる。

空っぽになった彼の主は
初夏の陽射しを受けて、ますます宝石のようにきらきらと光る。

彼が受けるには眩しすぎて、
景麒はうっそりと目を細めた。
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by kanae-r | 2014-09-17 00:38 | Zodiac >12 | Comments(0)