当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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leo





ゆるり、と指先で背中を辿られ、
くすぐったがるように、身じろぎする。

黒髪の偉丈夫。爽やかな双眸が、眩しいものを見た様に、狭められる。
「何だ」

何でもない、と男が答えると、
陽子は不貞寝を決め込む。それ以上の反応は無かった。
ふわり・と風が堂室に吹き込む。身体がとても、たるかった。このだるさは、覿面の罪だろうか。

再び、背中を辿られて、陽子も身じろぐ。
うつ伏せになったまま、傍らの男をみやる。相変わらずのそ知らぬふり、陽子はそれ以上の反応をやめた。



初夏、大暑。太陽の黄経が120度に達した時で、夏の暑さが最も厳しい時期に当たる。
太陽が昇る前、夜の冷たさが、まだ地上に残っている。



「取引なんだから、さっさと教えろ」
不貞腐れたように陽子が言えば、快活に偉丈夫が笑った。

「流石、武の女王といわれるだけある、胸の空く割り切り方だな」
「尚隆」
機嫌を悪くした陽子の眉間の皺を尚隆が親指で撫でると、
ふわり・と第三の目が暖かく・心地よくなる。

同じ波長のものは、心地が良い。


「何から話すか」
朝方から、強い度数の酒を小さな硝子杯に注ぎ、男は煽る。
ここ、関弓の宿舎は陽子があきれる程に、洒落て歌舞いていた。
(この御仁、趣味が悪い)
心の中で思ったことを、判ってか、男が意地悪く笑んだ。



「芳極国先の王は治世約30年の健仲韃だったな。統治の最後の年には30万人が処刑され、仲韃の治世全体では人口の1/5にあたる60万に及ぶ民が処罰されるに至り、恵州侯月渓が中心となって余州八州全てが蜂起し、王と王后、麒麟が共に殺害された。お前もよく知る話だ」

「似たことが嘗て柳に起きた。苛烈な勅令に対し、余州八州が蜂起し、禁軍と首都州師の王師と激突することとなった。王は浮民を徴兵し、軍を拡大した」

これは初めて聞く話だった。
陽子はじ、と語る男の眦を見遣る。

「軍の体系は天綱に定められており、それは内乱鎮圧と警察業務に必要な最低限の人数だけに限定されており、王が勝手に拡張・増強するのはもちろん、動員の際の人員規模の内容を削減する事も出来ない。しかし、これは覿面の罪には当たらなかった。軍隊としての戸籍を登録していなかったからだ。宰輔の使令も動因されたが、同様だった」

「台輔の失道は、彼の王君の道を失ったことによるものか、この内容に拠るものか」
「さてな」
男は杯を置いて、陽子の両腕を掴んだ。
身動きが取れない中で、男の眦が、愛しいものを慈しむかのような、色を見せる。
深い鳶色の瞳の中で、自身が呆けているのを、陽子は目視した。
「俺はお前が愛しい。長い生に飽く前に、こうして出会えた。だからこそ、失いたくないぞ」
「笑止だな」
「阿呆の戯言と思っていればよい。取引して俺や六太を使って構わん。但し、死ぬなよ」
唇に落ちてきた暖かい温もりに答えながら、心のどこかで、死を望む自分がいることを、初めて陽子は理解した。
でもそれ以上に、この憤りは何だろう。これは天に対する、怒りだ。


「天に喧嘩を売る女など、俺の手には余る」
「貴方の物になった覚えは無い。私は慶の民の物だ」
両手を頭の上に抱えられて、身動きが取れないので、げしり、と相手の男の腹をける。
「慶の者が羨ましいな」
くつり、と笑う眦。
「外に出ましょう、今日は祭りでしょうに。だから雁に来たんですよ」
「そうだった、ついな」
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by kanae-r | 2014-09-14 15:40 | Zodiac >12 | Comments(0)