当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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scorpio

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秋、実りの季節。
今年の穀高は順調で、特段国家を揺るがす問題も無かった。
順調に収穫が進む南から、北に向けて黄金色の地表が広がる。
秋の風景が、何より陽子は好きだった。

凌雲山の上からではなく、地表の州城で振舞われた料理、
その一つを口にして、陽子は違和感と、後悔を感じる。



そもそもは、対外的な交渉のタイミングを優先するばかりに強硬な政策の末に、起きた州と浮民との諍いだった。
この所、急ぎがちな政策の判断が多く、慶国内での議論が不十分なまま、
新規の浮民と州の製品に関する税率の改定を強行していた。
各州への理解の周知については、各州候に一任しており、州内部での徹底の報告まで、
周知の徹底をしていなかったのは、事実である。



浮民を決して優遇するわけでは無いのだ、ということを州候に対していくら言った所で、
これを機会に、思うところのある者たちが、
こういった機会を利用して、我が利権を拡大しようと試み
波及的に情勢悪化した州があった。

その内乱を収める交渉そのものは、実際に国官からの代表と無事に終え、
暫くたってからの行幸であった。
「・・浩瀚、」
側に控えていた浩瀚に耳打ちすると、浩瀚は鉄仮面を崩さぬまま、一度退席し、
そして傍仕えの女官が陽子の前の皿を下げた。


それを口に入れた瞬間、違和感とともに混ぜられた異物の存在と、全体の事態の掌握をした陽子は、
何処か、諦めや絶望よりも、希望を持った。
国民の、意思がハッキリとぶつかって来たことに手応えを感じたからだ。
逆恨みをした愚かな官吏がいたのである。

国民性として、慶は何処か、
見て見ぬ振りや、我が事でない出来事に非常に無関心である。
(その辺り、麒麟にそっくりであるように)

だからこそ、こうした場で向かってくる、決死の想いを受け止めることがあると、
憤り以上に、嬉しさも感じるのである。
「候、毒見は済まされているのか」
言のひとつで、相手はさ、と青ざめた。
致死性の毒であっても、相手は神籍。そして、州候に咎があるとは限らない。
浩瀚の一声で、その場は解散となった。



神経性の薬だったのか、退出する途中
陽子は著しく情緒不安定になる自分を感じた。



幸いにも、気の強さからか、相手に対して剣を振るうという惨事には至らなかったものの、
普段隠れていた感情や本音が見え隠れする気配がある。
(これは、まずい)
脂汗が、額から落ちる。
秋風に身体がぐん、と冷えていく。




「大丈夫ですか」
傷医の処方した解毒剤を浩瀚から差し出され、陽子は大人しく受け取った。
神経性の麻薬が食事の中から検出されると、
その場で軍が女官や州候らを取り押さえた。奥の堂室で、騒ぎがどんどんと、大きくなっていく。


「身体は大丈夫」
そう、答える様子が平時とそう変わりないので、
人払いを済ませて、奥の堂室へと付き添う。
秋の風が、ふわりと吹込み、裾を揺らす。

堂室に下がったまではよかった。
その後だった。
「剣の相手、してくれないか」
ひどく青ざめたような、其れでいて熱っぽい顔をした、主が縋るように言った。
「は、いま、ですか」
「身体が昂ぶって適わん」
殺気だった気配が、少女の身体から立ち昇っている。
「怖れながら、文官の拙めでは相手になりませんでしょう」
「桓魋も同行していないのだし、軍はあいつらにかかりきりだし、仕方ないじゃないか」
ぐ、と胸倉を掴まれ、浩瀚は息が詰まった。
では、人払いして、場所を探します、と答える。


一通りの場所と道具を準備させると
剣戟の応酬を一通りして、その殺気と華奢な身体に気圧され、
(なんだ、できるじゃないか、と陽子は言い放った)
いくつかの応酬ののちに
浩瀚は、どう、と地面に押し倒された。
きらきらしく、汗が滑らかな肌に浮いている。
息が上がった王の頬が上気している。
殺される、という逼迫感よりも、純粋に不敬な思いがじわり、と腹の下から立ち昇ってくる。


ふつり、と弦が切れたように、
緊迫感を持っていた瞳が、ぼんやりと熱を孕んで、
目の前の人物を認識するようになった。
すまんな、とそう口にして、
首元に押し当てられていた剣が首筋からはなれる。
思わず咽せた浩瀚に対して、後悔と憐れみが混じった視線が注がれる。


「天に対して、どうしようもない憤りがあるんだ」
主はギロリと目を棘棘した光で煌めかせ、言い放った。
咄嗟に、浩瀚はあたりの人気を確認した。


天を不敬とする発言を王がするなど、前代未聞である。
陽子も臣下の前ではこう言った発言をしたこともなく、
(台輔や延王君の前で、こういった議論をされた、ということは小耳に挟んだことはある)
つい、と言葉が零れたようだった。

荒れた息が、何処と無く余裕が無い様子で、
苛立ちが残ったまま、胸倉を掴んだ手が離れた。
浩瀚は立ち上がり、
布の乱れを正す。



「熱がまだ抜け切らないようですね」
苛立ちの眼差しが、決意を孕んだ男の眼を見て、
理解したように、笑みの色を浮かべる。
何処か、嘲笑に似ている。

「覚悟出来てるのか」
最後の架け橋を、藁をも掴む思いで渡るようだった。
「拙めの身は全て主上の物にございます」
項垂れた首筋に、秋の風が吹いた。
「・・斑渠、下がれ」
音も無く、気配が遠のく。それはつまり、浩瀚が、許されたことを意味している。
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by kanae-r | 2014-09-18 05:04 | Zodiac >12 | Comments(0)