当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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民衆を導く自由の女神





「陽子が戻らない?」

長い夕方だった。
この慶東国の主である少女が、夏季休暇を取って、三日。
その間の警護は虎嘯の担当であった。
その大僕とともに、主が予定していた休暇を追えて帰ってくるはずの日であった。


この国の覇権を実質掌握することが出来る唯一の立場―六官長である浩瀚の命を受けて、秘密裏に桓魋は尭天に下りた。
活気溢れる町並みに、夕暮れの陽が迫る。
一面赤い色をした尭天の町並みを、どこか懐かしい気持ちで
久方振りに自由の時間(それも彼の主が見つかるまで、の時間であるが)を得た桓魋は、
そろりそろりと辺りを見渡す。

尭天に下りる、といってその後数日、彼の主がこの尭天にいつまで留まっているのか定かではなかったが、
麒麟の言を頼りに、その街並をくまなく歩くことにする。


きゃらきゃらと笑いながらこどもがころびまろびながら桓魋の足元を駆け抜けていく。

かつてこの尭天で女性の不在があったことが、はるか彼方に感じられる光景である。
子供の姿が至るところに見える。子供がいるということは夫婦がいるということ。夫婦のともし火でもある、家々に灯火が着き始めた。炉辺には火が入るだろう。汁物を煮たく匂いがそこここに漂ってくる。

子供の数はえてしてこの国が伸びしろであるように桓魋は心持ちが明るくなった。
かつて彼が小さい頃、遥むかしに感じた平穏安寧がそこにある。

(いかん、いかん、今は探し人が先だ)




裏路地、表通り、治安のよしあしに限らず全ての場所を組まなく探す。
人々の表情は得てして平穏。

そして、彼の探し人は赤い赤い夕焼けの中にいた。


きらりと翡翠の瞳が輝く。赤い髪が燃えるように夕焼けの中で踊っている。
酒樽の上に座って、そして何か楽しそうにしているその姿を見て、
あ、とかつての謀反を起こした街の様子を桓魋は思い出した。
酒樽の上にすわる主君の姿。そして其れを取り巻く市井の人々。



人のなかにあって、その人の姿は、なぜか目が留まってしまうのであった。
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by kanae-r | 2014-10-13 20:43 | sss>12 | Comments(0)