当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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第五夜 王座の少年









桂桂はその日、鈴と一緒に王室の色々な堂室の掃除をしていました。
客房や花庁を掃除したり、園林の草木をととのえたり、人手のたりないなかで、
当時それはそれはたくさんの仕事を
桂桂もあたえられていたものです。


とある冬のこと。
日が落ちるのはとてもはやいのですが、
与えられたしごとがおわらず、
日もいよいよくれてしまいました。

姉のような、女御の鈴と分かれて、とある堂室の掃除をしているときのことです。
とある冬のことで、水を張った盥で布をあらっていると
きりきりと手にしみるようでした。

「すみませんが」
桂桂はよばれて、顔をあげました。

襤褸をまとった、見知らぬおばあさんがやってきて、すみませんが、と堂室のなかにはいってこようとしていました。
もうまもなく、夜がはじまろうとしています。
とおくに昇りかけのお月さまがみえます。

「おばあさん、どうしたんですか」
だれかの奄奚でしょうか。いままでみたことのないその老女の姿に、桂桂は不思議におもいます。
たしかすこしまえ、桂桂の姉とも言える、陽子の命令で、
内宮の人はとってもすくなくなったはずでした。

「すみませんが、そこの堂室にいきたいのです」
そこのへや、と言われて桂桂は、その堂室に隣り合った扉があることにきづきました。
いままで何度も、その堂室を掃除していたように思いましたが、
その扉があることに何故いままできづかなかったのでしょう。

きづけば老女は桂桂の隣までやってきていて、
祈るように手のひらをすりあわせていました。

「すこしだけですよ」

桂桂はこまりはてて、そのおばあさんを隣の部屋に繋がる扉へと導きました。

重くて重厚なその扉は、まるで桂桂をまっていたかのように
重そうな外見につりあわず、空気のようにするりとあいたのです。

彼女は自分の細い手を組み合わせ、里嗣にでもいるかのように畏敬の念にうたれ、あたりをみまわしました。

「ああ、ここ、ここなのです」

おばあさんはふらりふらり、とその堂室の中央へと向かっていきました。

「あっ」

桂桂はびっくりして口を押さえました。
なぜならそこは、桂桂が入ることが叶わない、
玉座のある外殿だったからです。

桂桂がびっくりしていると、
堂室の中央へおばあさんはあるいていって、そしてその玉座の下に簸れ伏しました。



「ここ」と言葉をもらすと「ここだったのね」と王座の方へ近づいていきました。王座からは黄金の縁取りのすばらしい布がたれさがっています。「そこ」と彼女は感動をこめた声をもらしました。「そこなんだ」 そしてひざまづき、絨緞に額を押し付けています。
おばあさんは泣いているようでした。

「どうしたんですか」

びっくりして桂桂が問うと、おばあさんは涙にぬれた瞳で答えました。
「ここでわたしの孫がしんだのです」


「そうなんですか?」
びっくりして桂桂がいいました。
「でも、ここには、こどもはぼくしかいないです」

「そうはいっても、ここなのですから」
「もうずっとずっとまえのはなしですか」
「あなたがそういうのならそうなのでしょう、でもこのばしょなのです」
「おばあさん、ここはいま陽子のためのばしょだから、いつまでもここにはいれないよ」

おばあさんは桂桂のことばに
顔をあげました。
「あなたのいうとおりですね」
ああ、さいごにこれてよかった、よかった、とおばあさんがいいました。



「もどりましょう、おばあさん」

桂桂のことばにおばあさんがうなづいて、たちあがり、
月のひかりが元来た道をてらしました。

とびらをしめて、ふう、といきをはくと、
おばあさんのすがたがありません。



「桂桂?おわったの?」

よばれて桂桂が振り返ると、そこには見知った鈴の顔がありました。
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by kanae-r | 2014-10-13 22:43 | 絵のない絵本 >12 | Comments(0)