当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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第六夜 大平原





草もまばらな大平原と不毛の地でした。

港町では気船が魚たちをけちらしているとき、月はその海面に映っていましたが、草もまばらな大平原と不毛な地には、写してくれるものなどありません。
それでも風の下ではさざなみがたち、はるかむかしの誰かの墓の上に長い影をなげかけました。丘をおおうまばらな芝には、名前が書かれていました。ここには記念碑はありません。それでもそこが墓であることは明確でした。

丘の頂には、一人の男がたっていました。広い銀の縁がついた杯ではちみつ酒をあおると、ある名前をつぶやきました。誰も聞いているひとはいませんでしたが、風はその言葉をきいていました。
秘密にしておいてくれるよう男は頼みます。でも風はその名前を聞いてしまいました。風にはそれが誰だかわかりました。墓の主はかつて煌びやかな冠をかぶった人で、大平原の墓の棺の冠には、その名前にはきらめいています。だから男はその名前を大きな声で口にしなかったのです。遠い港町では、気船が魚たちを蹴散らして、南に向かおうとしています。

季節風は東から西へと吹いていきます。
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by kanae-r | 2014-10-18 10:44 | 絵のない絵本 >12 | Comments(0)