当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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第九夜 グリーンランドの夏の夜






空気はふたたび澄みわたっていました。幾夜がすぎ、月は上弦になっていました。

そこは、荒涼とした氷に覆われた岩々と暗い雲が谷にたちこめている場所でした。
小さな柳と小蘗が緑に装い、花をつけた仙草が甘い香りを漂わせていました。
月の光はぼんやりとしていて、茎からちぎれて何週間も流れにただよった睡蓮のように青白くなっていました。極光が夜空にはげしく燃えています。極光の輪は大きく、そのまわりでは光線が夜空全体に何本もの火柱のように放たれていました。まるで王冠の形のように、極光は、緑から赤へときらきら色を変えながらきらめていました。

氷におおわれた場所に住んでいる住民たちは今は眠っているのか、誰の姿も見えません。
美しい夜空の王冠も、かれらにとっては慣れっこで、わざわざ目をやったりはしません。芳極国という名前のとおり、十二の国の中でも、もっとも寒くて、もっとも雪と氷に閉ざされた場所なのです。

岩々が動き、氷河がきしみ、大量の氷と雪がくずれおち、こなごなに砕けました。すばらしい北の大地の夏の夜でした。

一人の少女がそのつめたい夜の空間の中にいました。
その少女は十五、六の頃でしょうか。紺青の髪、紫紺の瞳をしていて、寒さを感じないようすで、そこにたっています。

一人の男もすぐ傍にいて、その男が何か気遣う様子で、その少女にあつい褞袍を渡しました。
凛とした雰囲気をもつ、青い髪の少女が礼を言ってその褞袍を受け取りました。

隣の男は若い顔立ちをしていましたが、その表情は、どこか老成している色がつよく、
まるでその顔立ちに似合わぬ雰囲気をもっていました。

男の様子をちらりと伺い、ふと少女が空を見上げます。
美しい夜空の王冠は、緑から赤、赤から紫、つぎつぎときらきら色を変えながらきらめていました。
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by kanae-r | 2014-10-16 21:53 | 絵のない絵本 >12 | Comments(0)