当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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第十一夜 死の都






そこは、湾を抱き込むようにして馬蹄形に広がる、壁、柱、手摺りまですべて白、屋根は紺の王宮でした。
かつてそこには美しい路寝が存在していて、ずいぶん昔には小さくてかわいらしい宰輔と、その傅相が美しい庭院を散策したり、逞しい主にいたずらをしていたり、にぎやかなところでした。今は死の沈黙があたりをおおっています。

死の沈黙があたりをおおう、その山のてっぺんからふもとに目を向けると、そこもまた、死の都のようでした。
鴻基とよばれたその街は、ただ白圭宮に続く凌雲山だけがいつまでも、冬の強い風を受けて、山鳴りのような轟きを響かせていました。その一つ一つが人にとっては、ごう、ごう、と大きな声で驚かせるものですから、とても冬の恐ろしさを助長するようなものなのです。
今では少なくなった首都の民たちは雪のように真っ白な大理石でできたその首都の里嗣に行き、天に祈りをささげていました。
その広い階段の前には高い祭壇があり、柱のあいだでびっくりとするぐらい、頼りない里木が強い風に耐えるようにしています。

空気は澄みわたり青く、黒い凌雲山が常にごう、ごう、と恐ろしい風の音をを響かせながら背景にそびえていました。その上には夜の帳の中に薄雲がひろがっていて、まるで松の樹冠のようでした。

誰かの衣服だったのでしょうか、それとも、掃除をするときに誰かが使っていた襤褸の切れ端だったのでしょうか。白い布が、ひらり、と風に舞って、里木にかかりました。
はたはた、とはためいているので、まるで凶事の際に、街のあちこちに揚げられる白旗のようです。

いま、夜が近くなって、街には人っ子一人みあたりません。かつてさかえたその都も、王宮も、かつての人びとは去っていき、物音一つ聞こえないのです。 
すべては終わったようで、あらたな黎明の息吹は遠くにあるようです。ただ廃墟とも言える王宮は姿をかえず残っています。何世紀たってもこのままかもしれません。
かつてのすばらしい新王に対する一時の拍手喝采や歓喜の渦のことを知るものが一人もいなくなっても、王宮はこのままです。全てが忘れさられ、去っていっても、王宮はこのままなのかもしれません。

今はまだ長い冬の間にあるような、この街の様子は、この一時は、ほんの過去の夢にすぎないのかもしれないし、これからも続く現実なのかもしれません。

長い長い夜が明けると、まもなく朝となります。
それは世界のどこであっても平等な出来事でありました。
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by kanae-r | 2014-10-16 05:10 | 絵のない絵本 >12 | Comments(0)