人気ブログランキング | 話題のタグを見る

当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

依依恋恋

>






ようするに、二人とも、失ったものが多すぎたのだと思う。
愛する家族・友人・大事な仲間・相棒・心を許した相手。

失ったものは戻ってくることは無く、遠い過去にある。
それでも過去に戻ることは出来ず、戻る気もさらさら無かった。




傷ついた時、心を癒すには、深い沼にどこまでも沈んでいくのが良い、と朱は思っている。
深い沼に沈み、思考の中で、思慮に囚われる。何かふとした瞬間に、目に入るもの。嘗ての思い出、記憶、感覚、感情。何かの折に、過去へ繋がる糸を手繰り、つまみ、布を織るように、記憶を整理する。
それはあくまでも一人で行う作業であり、誰かと分け合う作業ではない。



「それって、容量オーバーにならない?」
色相の曇らない朱に、サイコパスと心は違うのよ、と言い切った志恩は、
適当なタイミングで、朱に声を掛けて、朱の話を聞く。

「そうでしょうか」
「そういうのはね、どこかで吐き出したり、溜めていたものを出して、きれいにしたほうがいいのよ。適度な運動、とか、汗や涙、とかね」
彼女が意味深に笑ったので、からかうのはやめてください、と朱は頭を振った。








感情を一切そぎ落としたような横顔が、余りにも寂しそうだったので、
今聞いた話を踏まえて、宜野座は言葉を選んだ。


「ダイムを貸そうか」

その提案に、朱が深い鳶色の瞳をぱちくり、と瞬かせた。




傷ついた時、心を癒すには、誰かと共に時間を分け合うことが一番だと、宜野座は思っている。
それは彼の愛犬にしかり・生物であることが一番だ。コミュニケーションを交わせる、それこそ犬でもいい。
一番いいのは、言葉と交わせる人間。そしてその心情の背景を理解し、共感できる相手。
共感できる―つまりは、同様の経験がある人間など。


「ええと、」
朱は言葉を選んだ。

「お言葉に、甘えます」
by kanae-r | 2015-02-05 21:02 | Psycho-Pass