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当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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1 幸運を祈る

「おきろよ」
「いーやーデースー」
「おきろっつってんのに」
さくさくと着替えつつ千秋はまだまだ布団の中ののだめをにらみました。
「いいかげんにしないとメシ抜きだからな」
「えー、困りマスー」
のだめは困ったように眉間にしわを寄せましたが、千秋にはどうしてもかわいいように思えて仕方ありません。寝癖のたった栗色の髪も、白くて柔らかそうな肌も、あどけないその表情も。
のだめはにこりと笑みます。
「でも真一クンぜったいのだめにご飯抜きなことないですよネ」



図星だった千秋は一気に気持ちがなえました。そうです、いつもいつも最後に折れるのは千秋ですから、いつでも千秋はのだめのためにご飯を作ってあげているのです。
甘やかしているのだろうか愛情なのかこれはなんだ俺はなんだ
思考の沼に片足を踏み入れそうな千秋を、のだめの一言がさらりと救いました。
「先輩優しいから」
ふうわりと花のように笑うのだめの笑顔を見て、千秋は肩の力が抜けていきました。
「あーもう、早く起きろよ」
振り切るように話題をすりかえて、ほんの少し赤い顔はそっぽを向いています。
「せんぱいー時間が」
はと見やった時計はすでに八時を越えています。
「ああもう!お前のせいだぞ!」
メシ抜きという話題どころではありませんでした。
「あっ人のせいにしちゃいけないんですヨー」
「知るか!」
急いでかばんを引っつかみ、ドアをあけた千秋をのだめが呼びます。
「せんぱい、がんばって!」

ぐー、と親指を突き出されて、それは幸運を祈るジェスチャーだと千秋は知っていましたが、とても嫌な顔をしました。
「あっこれの意味わかりマス?」
「はいはいじゃあいってくるから!」
いそいで出てきた向こうから、のんびりとした声がいってらっしゃーい、と追いかけました。



風のように出て行った千秋の気配がなくなってしまってから、のだめは両手をうんと伸ばし、それからまた温かな、毛布にくるまりました。
「もうちょっと寝よ」
そうしてすうすうとのだめは千秋の苦労を無下に穏やかな寝息をたてはじめました。
今日もまた穏やかな日々が続いています。
by kanae-r | 2005-04-07 21:24 | 指に関する5つのお題>nodame