当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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ラプラスの風





その時彼女がまとっていたのは薄い薄い羽衣であったからかもしれないが
天がまるで意思をもっているかのように、びょう、と大きな風を吹かせたので、
ぞわり、と浩瀚は背筋が泡だったのを感じた。

浩瀚は、これといって、天の加護を信じたりしなかったが
その時ばかりは天の存在を信じたくない、とあらためて感じた。
なにせ、彼女をとりまくあらゆる事象が、光や、音や、そして風が、彼女を権威だたせる要因にしかなりえないように、天の意向が、加護があるように、思えたからだった。
彼は民衆の意向や、力量や、可能性を信じたかったし、天に左右されるような民衆の生活に飽き飽きと、げんなりとした時期もあったものだから、だからこそ彼女が、彼の女王が、民衆に支持され、理解されているからこそ、支えてきたのだった。
天のくだらない意向に左右されてしまうような、天啓を受けたからそこにただ或るような、王は願い下げだ、とずっと考えてきた。

彼の絶対無二の主は、その時血まみれで、
水寓刀には紅い人間の血糊が付いていたし
それでも身体にまといつくやわらかな羽衣にうまい具合に風が絡んで、ふわり、とかぜを受け流していた。

かわいらしい唇や、ほおの辺りの少女らしいまるみをのこしながら
その瞳はまるで老衰した老人のように、暗い色をしている。
浩瀚はどうしても、その深いふかい翠色が苦手だった。

「それで?いい残すことは?」
明るくも感じるその声には、何の感情も感じられない。
浩瀚よりも傍に控えている禁軍左将軍は、何の顔色も浮かべていないように見えて、かねてからの付き合いからか、どこかおびえているように見えた。
かの女王は、とても遠くの存在であるように、彼女よりずっと老衰しているはずの浩瀚からも、感情が読み取れず、恐ろしい存在だからだった。そこには空虚と、闇と、風が吹いているほかなかった。
からから、とした風だった。
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by kanae-r | 2015-08-30 22:13 | sss>12 | Comments(0)