当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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NOW HERE (1)

■さくらいろの、ほんわかとした色合いのそのワンピースをみて、のだめはほうとため息をつきました。そのため息がしあわせそうなさくらいろだったのにのだめは気づいていません。
「洋子も気が利く」
柔らかな素材に、ドレープが胸元に入って、すそには花が散っています。
空は快晴、空を泳いだら気持ちよさそうです。
薄い薄い雲は空高いところでするする流れています。大気のながれは風をまきおこしてフランスの、その華美でなくなんとなく品位のあるような、きれいなきれいな部屋まで春のにおいをつれてきました。
春風が吹き、調えられた部屋の、フローリングやピアノをなぜてのだめのところまで届きます。
栗色の髪がふわりと揺れてまたもとにもどるまで、のだめはそのワンピースを瞬きもせずじっとみていました。
それからふと笑って、(これは自分のために笑んだのではなく)丁寧にワンピースを畳み、日本から空を飛んでやってきたそのダンボールからタオルとか白いかわいらしい服とか、タオルケットや食器をだしては眺めていました。ダンボールが空になって、のだめはそれらを新しい棚へしまいます。
空は快晴、空を泳いでいる鳥は気持ちよさそうに歌っています。


■のだめは外へ出ようと水色のつるりとしたワンピースとボレロの上に薄手のベージュのコートをはおり、先が丸くてかわいらしいトゥの靴を選びました。この間新調したそれは白い色をしていてリボンがついていて、のだめが気に入ったものです。
鍵をかけて外へ出ると春の陽気な温かさがありましたが、風は少しだけ寒いような気がしました。自分の服を見て靴を見て、
「これならデートにぴったり」
なかなか満足な様子で階段をふんふんいいながら降りてゆきました。
向かいのおばさんや、なじみのパン屋にあいさつをすれば、
「どこいくのさ、おしゃれして」
と、人の反応も良好でのだめはニコニコして待ち合わせの場所へ向かいました。
春風はのだめのワンピースのすそをちらりちらりと弄びますがのだめは気にすることもなくとことこと歩いていきました。
街路樹には若草の色。新芽の季節と言うのは誰だって気持ちがいいものです。そう思う感情に国の差はないらしく、おじいさんとおばあさんがベンチでのんびりとお茶を飲んでいました。幸せそうな二人には和やかな空気がありました。
「いいですネ」
のだめはそうしてとことこ向かいます。



■ついた先は家から程近い繁華街というか、色々なお店が並んでいます。
通りの端のほう、小さなベンチがあります。日にあたって暖かそうなそこに全身黒い季節を無視した格好の、長身の男が座っていました。仕事帰りというか、スーツに鞄でなんというか仕事帰りです。機嫌の悪そうな顔に見えますが、のだめを見つけると少し目元が柔らかくなりました。
「千秋先輩」
とことこと歩いていけばよいしょといったふうに千秋は立ち上がりました。それから遅い、と一言言いましたが冷たい感じではありませんでした。
「遅くないですヨ、先輩が早かっただけデス」
「人のせいにするなって」
笑い含みに千秋は返します。人が見たら仕事帰り、でもその鞄の中にスコアや指揮棒が入っていることをのだめは知っています。A4でもありますし。
春の風は千秋にも吹きましたが黒のスーツをはたはたとさせただけで通り過ぎていきました。黒髪はさわさわとしましたがそれだけでした。光をまぶしそうに千秋は目を細めます。
「先輩季節感ゼロ」
のだめが笑い含みに言います。
「仕方ないだろちゃんとしたところだったんだから」
千秋が返します。
するりと、どちらからともなく手が繋がりました。
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by kanae-r | 2005-04-23 21:43 | ある家族の風景>nodame | Comments(0)