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当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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NOW HERE (2)

■通りには出店の出ている店もあったり、晴れた日にふさわしくオープンカフェがしんしゅつしているところもありました。白い壁に青塗りの古い看板のかかっているそのお店は、外向きのガラス窓から中が見えて、中にはきらりきらりとガラスが光っています。青、赤、透明、緑とさまざまです。中ではおじいさんが新聞を読んでいました。
「ねぇ先輩、ガラスは危険デスか?」
「・・・・そうだなぁ、でも別に高い棚においておいたりしとけばべつに平気な気もするけど・・・」
「そうデスよね!」
のだめの声がとても嬉しさいっぱいだったので、千秋はじっとガラス窓から中をのぞきました。
「あの、三組の?」
のだめはそうだよ、と精一杯目で答えました。千秋がそのしぐさがちょっとかわいいな、と思ったのは別の話です。
それはシンプルなコップにグラデーションが下のほうにかかっていってだんだん青になっているものと、ピンクと、黄色のコップでした。でもただのガラスのコップなんてその辺の雑貨やでもなんでもどこでも売っています。
「行くか」
「あー!先輩!待ってくだサイヨ!むぎー」
ちょっと強め、しいて言えば無理やりに千秋を引っ張りのだめはその素敵なお店へ入りました。春の陽気で店の中は暖かめの温度でしたが、涼しげなガラスを見ているだけで本当に涼しくなるような視覚的効果がありました。
「あのな。こういうのって・・・まあいいや」
ちょっとのだめに言おうとした千秋も、店の中でしかも一対一なのに変なことをわざわざ言うのも気が引けるのでめんどくさくなってやめました。ただ今日の買い物の目的はけしてガラスのコップではないことを付け加えておきます。
「これ!おじいさんこれ!」
三個落とさないようにレジまで持ってきたのだめに千秋が言いました。
「で、これもってくの大変じゃないか?」
「お買い物が終わるまでお預かりしておきましょうか」
柔らかな声のおじいさんが提案しました。そうですね!千秋が口を開く前にのだめが決めました。
ありがとうございました、ではのちほど・というおじいさんに見送られてのだめと千秋は本来の目的地へ向かおうとしています。

■一時間後、のだめはたくさんの袋を持った千秋の前をとたとた身軽に歩いていました。鼻歌交じりで思ったように買い物が出来て満足そうですが対して千秋は不機嫌極まりない顔をしています。でもけして自分の奥さんに持てと強制しないのでした。
「先輩よかったですネ!全部そろって・・・・これで安心デス!」
「その前に俺は座りたい」
「あっじゃああそこのカフェでいいじゃないデスかー、あそこの甘いケーキ知ってます?人間的じゃないんですヨ」
「甘いのかよ」
「いえいいんデスのだめ食べれますから」
ニコニコ笑ったのだめの顔に、千秋は脱力しました、それから優しい笑みを浮かべました。
「まあいいや、体力つけろよ」
でもそれはにやりとした笑みに変わります。
「太らない程度に」
「ムキ―!しっつれいな!」
石畳は灰色黒味がかった灰色、等間隔の整然としているその石畳の上にはらりはらりと春の気配が漂っています。とたとた歩くのだめのペースに千秋は合わせて歩いてゆきました。

■千秋はあきれた表情で目の前の女を見ていました。幸せそう、確かに幸せそうですが、もう少し落ち着いて食べたらいいのに、と思いました。何度も言いましたが一向にスピードの落ちる気配はなく、紅茶を飲んだ時とか、話そうと頑張っている時、それくらいしかスピードは落ちないのです。
のだめの目の前には、薄いクレープを何枚も何十枚も重ねたような、山のようなミルフィーユのような、不思議なケーキがありました。ナイフを使ってざっくざっく切り分けて、いいえ斬り込んでゆきます。その大きな形が完全な姿をあらわしたのは15分ほど前のはずですが、今はもうあらかた形は残っていません。
「なんか俺・・・・気持ち悪くなってきた」
「えっダイジョブですか?!」
「お前がそんな大きさの平らげるから・・・」
「のだめは全然気持ちわるくないですケド・・」
「ウソだろ?」
対して無視しながらごくりごくりとのだめは紅茶を飲み干しました。
ごちそうさまでした。
息を吐き出しながら満足そうにそういった顔は幸せそうです。千秋は信じられない、と言ったような顔をしました。千秋自身さっきエスプレッソを頼んだものの、すでに飲んでしまっています。
しばらくのんびりしてからのだめが言いました。
「そろそろ行きマスか?」
「そうだな」
そして二人は黒い椅子から立ち上がります。
by kanae-r | 2005-04-24 23:51 | ある家族の風景>nodame