当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

ボストン、3月

>





飛行機は軒並欠航した。もう4月に向かうこの時期に、こんなに大雪が降るなんて珍しい。スネグーラチカ、ジェド・マロースだか、神さま、感謝する。ありがとう。これであと一日、ユウリと一緒にいられるかもしれない。スマートフォンをタップしていたユウリははぁ、とため息をついた。
「ヴィクトルも欠航?」うん、そうだよ。だからもう一日一緒にいられるね、と笑ったら、ユウリは困ったように眉をさげて微笑んだ。そうだよね、大人だもん。予定があるよね。俺は子供っぽい自分を反省した。
この大会期間で俺はユウリとだいぶ仲良くなれた気がする。エキシビションのときもバンケットのときも彼は人気者だったけれど、一緒にいれるところになるべくついていったし、後でヤコフはそれでユウリとチェレスティーノに平謝りしていた。良いですよ、と大人な対応をするユウリの笑顔が素敵だった。ヤコフは平謝りしながら、俺が熱心なユウリカツキのファンである事を暴露したので、俺は思わず頬が赤くなってしまう。酷いじゃないか、ヤコフ。恥ずかしい。

ホテルの朝食会場で、ユウリはミルクを入れずにコーヒーを飲んでいた。かっこいいなあ。俺は紅茶。バンケットは良い。どうどうと写真が沢山とれるから。彼のブラックのスーツは素敵だったな。身体の細いラインにあったイタリアンスーツで、艶やかな色の生地だった。今度真似してみよう。二人で顔を近づけて撮ったその写真は宝物になるだろう。ホテルのベッドでスクロールしていたら、にやにや笑っていたみたいで、ヤコフは呆れていた。そんなに顔に出ていただろうか。

ユウリは一人部屋なんだって。遊びに行ってもいいか聞いたら、少し迷って、どうぞと彼は答えた。近くにいたクリストフが随分懐かれたね、とユウリを笑った。子犬ちゃん、独り占めはよくないぞ。

ユウリに問われるまま、俺は彼のベッドの上でスマートフォンをタップして今季のシーズンのロシアナショナルや、オーケストラや、バレエや、リンクメイトの動画を差し出した。二人で寝転んでいるとまるで兄弟のようだ。部屋に入った時、シーツは綺麗で整頓されていて、何日か滞在しているようには見えなかった。スーツケースは既にまとめられていて、いつでも彼は出立出来るようだった。俺なんか一晩寝たらシーツはどこか行っちゃうし、まだ荷物をまとめてもいないのに。ヤコフがやっておいてくれているかもしれない。

ユウリは博識だった。ステップやジャンプや筋肉や技術の話だけじゃなくて、プログラムの曲の解釈だったり、バレエやオペラやオーケストラについても詳しかった。

「どうしてその衣装を選んだの?」
優しいブラックの瞳がきらきらとまたたいている。外は大雪、窓から見えていた景色も見えない。交通麻痺で道路が大変なんだと今朝のニュースがやっていた。ロシアでもたまにこんな時があるよ。こういう時はね、外に出ないで建物の中にいたほうがいいんだ。彼の故郷のハセツというところは滅多に雪が降らないらしい。日本の中で一番はじめに春のくるところなんだって。
そんなあたたかいところ、いいなあ、いつか行ってみたいな。

これから、どこにでも行けるよ、ヴィクトルは。
優しく髪を撫でられて、俺はくすぐったい思いをした。

「ええとね、実はユウリに憧れてね、ポニーテールが映えるように」
彼は目線を少し彷徨わせて、過去の引き出しを開け閉めしてその記憶を思い出したらしい。ずいぶん昔だね、懐かしいな、とユウリは笑った。僕にとってはあまり納得のいかなかったプログラムだよ、と彼は言う。そんな事ないよユウリ、あなたの全てのプログラムは素晴らしかった、と力説すると、またユウリは困った顔をした。

君は怒るかもしれないけれど、その衣装と振付はまるで金平糖の精のようだったなあ、と僕は思ったよ、と彼は話した。俺はジュニアのプログラムを勇利に見せていた。なあにコンペイトウ?ああ、違う、ドラジェのヴァリアシオン、ほら、ピョートルチャイコフスキーのだよ。
俺はレッスンでバレエもする。わかる?俺、あれ好きなんだ。曲がちょっと気持ち悪くてさ、あとスピンが凄いでしょう、最後。衣装はよくわかんないよ。ヤコフ達が決めてたからさ。でもこれからは自分で、決めるんだ。ユウリはバレエなら何が踊りたいの?

ユウリは視線をまた彷徨わせた。
ううん、何がいいかなぁ。なにかこう、意外な感じのものをやってみたいなあ。エキシビションでやってみようかな。ぶつぶつと勇利が呟いた。ああ、おばけをやってみようかな。おばけ?ゴースト?前にねえ、サロメの七つのヴェールの踊りでね、おばけみたいにヴェールを被っているのをみたことがあって…何それ見てみたい、ねぇユウリ、楽しみだな俺、ユウリがきっと俺を驚かせてくれるね。二面性はいいよね、オデットとオディール、でもやり尽くされてる感がなあ。海賊とか、ドンキホーテとか、色々やってみたいんだよなあ。

ユウリと話をしていると楽しい。もっともっと近くにいたい。憧れも勿論あるんだけれど。次はいつ会える?そうだねぇ、来月東京で会えるんじゃない?そうだ!すぐだね、もうあたたかいかな。きっとね。ユウリは振付もするんでしょう?いつか俺の振付をしてよ。ええ?とユウリは笑った。俺は肯定してもらえなかったのが悔しくて悔しくて、ごまかすようにぐりぐりと頭をユウリの肩に押し付けた。ユウリは笑って俺のつむじを押した。何てことだ。前にも確かつむじを押されて怒ったのに。気のせいか。ユウリではない誰かの思い出かな。俺はまた少し悔しくなった。世界選手権はまた目の前の男に金色のメダルを攫っていかれたからだ。何てことだ。






[PR]
by kanae-r | 2017-01-22 05:17 | YURI ON ICE | Comments(0)