当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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東京、4月

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スマートフォンに通知があったようで南くんが立ち止まった。
国別対抗戦は団体戦だから、こうして団体行動をしていると、新鮮で楽しいけれど少しだけ気疲れした。やはり僕はわがままなんだろう。アメリカに長く居すぎたのかもしれない。あちらはドライだ。日本はややウエットだ。
南くんと会場を抜け出そうとしていたところだった。
それでも、だれかの応援をして、してもらって、改めて日の丸の国に生まれたと思う。早朝。会場のまわりには一般人の姿はない。南くんはまだ学生で、ホームリンクも日本だから普段はなかなか話す機会も無い。南くんも今年からシニアデビューだ。
「勇利くん、ヴィクトルと知り合いだったんですね」
おいが勇利くんと一緒いうたらめっちゃ羨ましがってますけど。あいつ勇利くんのファンですけん、今からこっち来るって。うまく抜けれんのかな。
「そっか、君はジュニアから一緒だったものね」
ぽちぽちとスマートフォンを操作する南くんの背は僕よりもだいぶ低い。同世代の中では一番低いのではないだろうか。それでも彼の身軽なステップやジャンプは、その小柄な身体を十分に活かした内容で、僕は好きだった。

「ユウリ!ケンジロー!」
銀色のポニーテールが跳ねている。ロシアのナショナルジャージだ。南くんとヴィクトルはハグをした。
ヴィクトルは僕にもハグをした。そのまま離れない。南くんが負けじと腰のあたりに引っ付いた。
いい季節だね、ユウリ、ほんとにサクラが咲いてるよ!ヴィクトル、ひっつきすぎやけんね!なんばしよっと?ケンジローはいつでもユウリと会えるだろ?ヴィクトル調子のっとらんね?ケンジローのケチ!

二人がなにか言い合いをしている間に、南くんを日本チームのスタッフが呼びに来た。今は雑誌用のスチール撮影を順番にしているのだった。南くんはヴィクトルの方をきっと睨んだ後、おいの勇利くんだからな!と叫んで諦めて連行されていった。僕は誰のでも無いんですけど。

「ユウリ、聞いてる?!」
酷いよ〜、とヴィクトルが目を潤ませた。薄張り硝子は朝の光が眩しそうだ。そう、薄い色彩は強い光に弱いのだ。ああ、既視感。ねえヴィクトル、いつも言ってるよね?と言いかけて、飲み込んだ。駄目だ、何やってるんだろうか、また妄想だ。

彼の瞳を守るように掌で影をつくってやる。ほらヴィクトル、みてごらん。桜だよ。ヴィクトルを待っていてくれたんだね。目線を合わせるために少し膝を曲げる。隣の顔を覗き込むと、目の前の景色に春の空の色をした瞳がまたたいた。綺麗だねえ、ユウリ。もっとたくさん咲いてる場所もあるんだ。いつか君も行ってみたらいいよ。

今期は俺、成長痛がつらかったんだ、彼がポツリポツリと最近の話をするので、そうだねえ、我慢の年だね。と言葉を返してやる。
ユウリ、またつぎはいつ会える?ヴィクトルが真剣な顔で聞いてきた。次はいつだろう、また冬にだろうね。ユウリの来年のシーズン、楽しみだなあ。
きらきら輝く瞳がまたたく星のようだ。透明で、けして手の届かない。

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by kanae-r | 2017-01-22 07:10 | YURI ON ICE | Comments(0)