当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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ニース、2月

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俺はユウリが好きだった。黒い瞳に黒い髪、しろくて陶磁器のような柔らかい肌。
憧れているばかりだったけど、シニアになって何度か話をして、彼がやはり人見知りである事とか、凄く物知りなことや、知りたがりであることとか、興味を持つときらきらと目がかがやくこととか、いろんなことを知って、伝説だけじゃない一人の人間としてのユウリにいつも心を惹かれた。
彼が吸収したものが、芸術に昇華されてリンクの上で表現される。彼の中はいったいどうなっているんだろう。彼の中身が知りたくて、ちょこまかとくっついていたらそんなに僕が好きなの?とユウリか困ったように笑った。そしてちょっと目を離した先に帰ってしまった。

どうしてこんなに遠いのだろう?前はもっと、近くにいたのに。前?いつの話だ?

俺はユウリが好きだよ、と黒い瞳を覗き込みながら言った。ありがとう、僕もヴィクトルが好きだよ。俺はNo,と答える。LikeじゃなくてLoveなんだ。それは光栄だなあ、といつものぼんやりとした笑みでユウリは答えた。酔ってるの?ヴィクトル。いつもそうやって人を口説いてるの?なまじ顔がいいんだから女の子が可哀想だよ。
本気なんだけどなぁ、ヴィクトルは悲しくなった。ユウリ待って、もう少しだけ話を聞いて。多分これ、agapeじゃなくてerosの方でのLoveなんだ。

ユウリは今度こそ全く笑わないで、溜息をついた。その瞳に浮かんでたのは嫌悪だろうか、俺はまたユウリを困らせてしまった?
場所を変える?ヴィクトル。こんな場所で話すような内容?変えなくてもいいなら、僕はもう帰るよ。たぶん今日のことは明日には全て忘れてるだろうね。
ヴィクトルはユウリの手を取ってバンケットルームの扉を開けた。ユウリの手は驚くほど冷たくて、びっくりするほど、細かった。

クリストフジャコメッティが引退するまで、バンケットを抜け出して二人で飲みに行っていたらしい。羨ましいなあ、とこぼすと今度から君を誘おうか、とユウリが笑った。
たぶんね、ヴィクトル、君のそれは勘違いだ。彼女とか居ないの?ユウリはくるくるとグラスの中のまあるい氷を揺らして遊んでいる。琥珀色の液体はきっと度数が強いだろう。俺はペリエを少しだけ舐める。なんて素敵な人なんだろう。全てが様になって居て、ヴィクトルは頑張って釣り合おうと思って努力したのに、彼の前では素の自分がむき出しにされるようだ。まるで子供な自分が。
「彼女は居たこともあった、けど俺はスケートが一番だったから」
「奇遇だね。僕もそうだ。スケートが一番」
憧れを拗らせた俺に、ユウリが淡々と説明する。でもこのLoveをなんて説明出来る?ユウリに論理的に説得されて、確かに俺はユウリを抱きたい訳じゃなし、抱かれたい訳でもないと、思った。でもキスとハグくらいならいいでしょ?
あのね、君らと違って日本人はそう、べたべたと人にくっつかないの。パーソナルスペース、わかる?これくらいね。冷たいよユウリ、でもあなたはデトロイトの方が長いでしょう?ああいえばこういうやつだな、君は。コーチが大変だよ。

そんなに僕のことが知りたいならスケートだけ見てくれていればいいよ。僕も君のスケートを見るから。それでいいでしょう?
今回も金色を掻っ攫った目の前の男は、水を張ったような黒い瞳でヴィクトルを見つめた。ヴィクトルは熱に浮かされるようだった。
「分かった、俺はユウリだけを見てる。ユウリも俺だけを見ていて」
いやちょっとそういうことじゃないんだけど、ユウリが吹き出したので俺も笑った。次は俺が金色をもらうからね。ポロリと零した言葉にユウリの目は笑っていなかった。

いつかユウリに聞くんだ。あなたは誰を思ってキスを捧げてるのかって。




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by kanae-r | 2017-01-22 10:39 | YURI ON ICE | Comments(0)