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当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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ミシサガ、10月

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ヴィクトルニキフォロフのSPを見て僕は鳥肌が立ってしまった。曲は「in regard to Love」だなんて。その瞬間まで、僕は去年の世界選手権の事をすっかり忘れていた。そう、バンケットの後二人でホテルのバーに行ったのだ。
この鳥肌はなんていうか、感動というか、心が揺さぶられる鳥肌だ。僕は昔から、誰かの影を追っている。金色への拘りも、スケートも、すべてはその影に繋がっていた。人生をスケートに捧げるつもりだった。恋愛もしたし遊びもしたけれど最後にはこれはスケートに役立つのか?とかいうつまらない判断基準。
愛について、だなんて。そう、愛について、本当の意味で考えたことなど、無かったのかもしれない。ヴィクトルニキフォロフは今シーズン、かつてのクリストフジャコメッティのように、点数で迫ってきていた。
僕は一年一年、終わりが近づいているのを意識しながら、薄いブレードの上を渡っていくように精神と肉体を調整する。僕達の競技人生は短い。若い彼はこれから大輪の花を咲かせることがわかるようで、僕はますます燃え上がった。アウェイと逆境は好物だった。

彼は何を考えて滑っている?agape?eros?聞くのは無粋だろう。
くじ引きで僕の滑走の方が前だったから、彼は僕の演技は見ていないだろう。ノーミスだった。完璧だったと思う。でも、心はこれほど動いただろうか?点を取りにいっただけでは?僕は僕のスケートへの愛をおろそかにしていないか?

勇利はその夜にホテルに戻って、星空を探した。
オンタリオレイクは真っ暗だろう。遠くて見えるものはない。勇利は夜が好きだった。つんとした冬の空気が。
スケートの神さまに僕は金メダルとキスを捧げている。気が付いたら追いかけている影はきっと、ヴィクトルニキフォロフのような姿形なのかもしれない。銀の雪の様な髪、氷の色をした瞳。彼はすっかり大人になって、はっきり言って美しかった。勇利とは人種も世界も違う。だからすっかり去年の酔っ払いの戯言を忘れていたのだ。

夜が明けたらFSだ。今季のプログラムも勇利は絶対の自信があった。
くしくも勇利は今季、神楽を元にプログラムを作成していた。スケートの神さまへの心も体も捧げる、勇利の愛を表現するのだ。彼は驚いてくれるだろうか。






by kanae-r | 2017-01-22 11:13 | YURI ON ICE