当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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大阪、4月

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だめだめ、全然だめー、とのんびりした声がリンクの外から聞こえた。

ヴィクトルはつい先日、彼にとってのLoveを手に入れた、と思う。年上の恋人は可愛らしく、かっこよくて、素敵な大人の男性だった。もぎ取った世界選手権の金の後、やるべきこともやらず、おはようからおやすみまで一緒にいたいのだとハセツに転がり込んでいたら、いつの間にかヤコフとユウリが調整していたのか、日本のアイスショーに出ることになっていた。あとたくさんの取材や撮影。そりゃそうだ、やるべきことを後回しにしたいたのだから。ユウリが全てヤコフと連絡を勝手に取り合って、ヴィクトルのスケジュールを決めていた。
ひどい!と何度か喚いたけれど、大人でしょう?と見つめるユウリの冷たい瞳に震え上がって、なんとか終わりが見えてきた頃のアイスショーだった。確かにユウリとはおはようからおやすみまで一緒にいれたけれどこんなに働かされるなんて聞いてない。
ヴィクトルは知らなかったが、アイスショーでのユウリの人気は凄かった。勿論彼は競技もすごかったのだけれど、より自由にすべるアイスショーでは、彼の芸術性やエンターテイナーとしての才能が溢れ出ていた。彼はデトロイトからの荷物が少ない、と言っていたが、衣装類は倉庫を借りていたからなのだった。彼はエンターテイナーとしての誇りを持っていた。

ヴィクトルは鬼のようなコーチ(彼はほんとうにヴィクトルのサブコーチになってしまった!)を前に息も絶え絶えになる。ついこのちょっと前、おれ、死ぬ程クワドフリップ飛んだんだけど…
美しくなーい、とコーチの声。ひどいよユウリ。でもユウリは他のみんなに対して同じ調子だ。
「ヴィクトル、勇利くんいうたら練習の鬼やけんね、死ぬのなんかわかっとるばい」
ケンジローだった。知らなかった。軽率にコーチなんて言うんじゃなかった!ユウリは真綿でおれの首をしめるように精神的にも肉体的にもダメージを与え続ける。
ユウリはケンジローにも、美しくなーい、と声をあげた。いまケンジローと練習しているのはステップシークエンス。アイスショーで見せるレベルに持っていくには、ケンジローとの息のあった練習が必要だった。おれはハセツでのんびりしていたかったのに。

曲が途切れてまたリンクがあけば、ユウリはユウリで一人で練習するようだった。まだおれの見たことのないプログラムが沢山あるらしい!確かに国際大会の動画は沢山あるけど、こういったアイスショーの動画って限りがある。

ユウリは照明合わせをしていた。淡いブルーの中をユウリの動きに沿ってスポットライトが照らしていく。衣装についたスパンコールとスワロフスキーがキラキラと反射している。燕尾服を思わせる衣装は彼の細い腰を魅力的に見せている。円熟した大人の色気!ぼうっとして見てしまうと、ケンジローも同じように溜息をついた。
「勇利くんやばかねー」
「ヤバカヤバカー」
戻って映像を見て、ユウリはまた何かスタッフと話し合いをしている。照明の色が一段と暗くなった。深い海のようだ。深い海の中で、ユウリが泳いでいる。彼は自由で、幸せそうで、彼は全身でLoveを表現している、きっとそう、ヴィクトルにはそう見えた。



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by kanae-r | 2017-01-22 16:24 | YURI ON ICE | Comments(0)