当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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バンコク、8月

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リハーサルを終えてホテルに戻ると、ヴィクトルからのメッセージがモバイルに入っていた。ピチットと約束した夕食の時間までは少し時間がある。
ハンガーに夏らしい麻のジャケットを掛けてから、ベッドに腰掛けてモバイルをタップする。メッセージを読んだ。
彼の今日の練習メニューだとか、食事の内容だとか、コーチの愚痴とか。なんだか声が聞こえてきそうで、勇利は可愛らしい気持ちになる。
根負けしたように流されている気もする。このままでは行けない気もする。返信をするか迷って、結局しなかった。
今年勇利は積極的に振付師とアイスショーの仕事を増やした。ロシアにいた昨年はヤコフフェルツマンの元でたくさんのコーチングを学んで充実した一年だった。それでも滑りたい気持ちには嘘はつけなかった。ヴィクトルを見ていると身体が疼いて、音楽が鳴り出す。競技の舞台でなくても氷の上にいたかった。
新しくエージェントと契約してロシア以外にも積極的に出るようにした。ヴィクトルはユウリのスケート楽しみだなぁ!とキラキラ瞳を輝かせて応援してくれた、と思う。最初は少し寂しい顔をしてたけど、そもそも後押しをしたのは彼だった。ユウリ、滑りたいんでしょう?コーチのほうは大丈夫だよ。ヤコフもいるし、俺は絶対に金メダルを取るし、だから、俺をみてて。俺の為のプログラムを作って。それだけでいいから、と。
寂しい時には彼は電話をして来るし、スケーターの中ではやっているものが多いInstagramをやろうよと勇利にアカウントを取らせたりした。勇利が写真を上げるよりも、彼はマッカチンや遠征先のようすや、セルフィーを上げるので、思ったよりも勇利はヴィクトルの毎日を知ることが出来た。
氷から降りたら死んでもいいと思うくらいにはスケートに全てを捧げてきたと思う。それがいつの間にか、年下の可愛らしいひとの情熱に振り回されて、思いがけないほどふところの奥深くにいれてしまっていた。
二人で見るもの、感じるもの、味わうもの、聞いてみるもの、体感するたびに彼が新鮮な反応をするので改めて思い出す。そうだ、これはあたたかかった。つめたかった。おいしい、きれい、うつくしい、ここちよい。いままで見ていた世界を上書きするように。
勇利は彼からたくさんのLoveをもらってばかりで、何で返せば良いのか、いつも考えあぐねてしまう。
いつか彼の目が覚めた時、手がはなせるように、と思ってた。そんな時がきたら、いよいよ世界は色を失ってしまうかもしれない。
彼に伝わるといい、十分に幸せをもらっていることも、目の前のあなたでいいということも。


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by kanae-r | 2017-01-23 03:12 | YURI ON ICE | Comments(0)