当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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ピーテル、3月

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世界選手権のあと、ヴィクトルは金色じゃないけど、キスしていいよと銀色のメダルを勇利に差し出して言った。彼は今大会で一番表彰台の高いところには乗れなかった。折角六連覇にリーチ掛かってたのに、詰めが甘いんだから。勇利はなんだかこの一年を思い出して、嬉しくなって、キスをしてあげた。ヴィクトルは恥ずかしそうに笑った。

とても長くて苦しい、もがき続けた一年だったと思う。彼はとても感情的だったし、スケートの方向性で何度も言い合いをした。彼の筋肉も神経も骨も、限界と限界の間で絶妙に調整しながら少しずつ進めてきた。シーズン前、今年のプロは自ら振り付けたいと彼は奮起した。実際に出来てきたものを見て、勇利は感動した。彼は才能があると思う。こんなことならもっと早く自分自身で振付すれば良かったのに、と怒ったら、ユウリが今まで俺にたくさんの振付で愛をくれたからだよ、と冗談っぼく返された。勇利があと出来ることは彼の背中をみまもることと、手を差し伸べること、そばにいることとか、どうでもいいことしかできないなと思った。
今年は彼は一人で乗り越えようとしていたし、何か想うところもあるようだった。
「ユウリの中にある俺を超えなきゃね」
よくわからないことを言って、彼は奮起している。アイスブルーが勇利を捉える。


結果として、彼は銀色のメダルを少し納得いかないようにしてサンクトペテルブルクへ勇利と帰ってきた。やっぱり一番が良かったなぁ、という彼と、祝勝会ではないけれど、競技大会の終わりを労うために、フラットでワインを開けて、食事をした。

大会のあと、彼はもうひとつ銀色のまあるいものを、勇利の右手の指先に嵌めてくれたので、勇利はそちらにもキスをした。それは全然冷たくなくて、寂しくなることなどなかった。

アルコールが入って、酩酊感があることを認識する。
「ユウリ今日はいつもより甘えたさんだ」
酔ってるでしょ、といつの間にか距離の近くなったヴィクトルに髪を梳かれる。
君はそうじゃないの?僕ね、君といるといつもふわふわするよ。
唇を食むようにキスをすると、アイスブルーがゆるゆると熱に浮かされるのをみて、勇利は嬉しくなってしまった。僕が欲しいのは、この人だ。全部欲しい。
約束だからね、そう思って正当化する。

勇利はヴィクトルの首筋に噛み付いた。鼻の先にも、こめかみにも、耳の裏にもキスを沢山落としたし、歯の裏側まで丹念に舐めあげた。爪の割れた足のつま先も、脇の下にも、丁寧にキスをして、噛み付いてやって、優しく触れた。彼の身体でキスしていないところはないんじゃないかと思う。

目の前には、自分よりも骨ばった美しい右手。薬指にもキスを落として銀色を齧ってやれば、薄張り硝子の目玉から、ぽろぽろと涙が溢れていたので、勇利は全てを落とさないように丁寧に吸い上げてやった。まったくもう、変わらず泣き虫なんだから。
金色のまあるいものとスケートの神さまは、勇利が固執してきたものだった。誰かの郷愁を感じたり、影を追い求めてみたり、自分がどこか狂ってることを感じていたけど、いつからか神さまの影はどこかに消えてしまった。勇利の愛は勇利にLoveとLifeを教えてくれたただの人間のためにある。どこにでもいるロシアのフィギュアスケーターで、甘えん坊で、泣き虫で、ちょっぴり自分勝手な可愛いひと。愛してるよ、僕のヴィーチェニカ。

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by kanae-r | 2017-01-23 06:41 | YURI ON ICE | Comments(0)