当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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バンコク、9月








学生時代に一緒に辛苦を味わった友人は、一生のものだと思う。
彼とはデトロイトで散々辛苦を舐めただけでなく、大人の階段を一緒に上ったし、つまり沢山遊んで失敗もして、今となれば笑い話だけれど、毎日がとっても刺激的だった。
彼の出身国はフィギュアスケートが一般的ではない。だからこそ祖国で初めてグランプリファイナルに残った彼と戦えたあのシーズンは、勇利にとっても大切な思い出だった。
ピチットシュラノンのすごいところは、彼は勇利以上にエンターテイナーとしての発想力とプロデュース力に溢れるところだった。かれは勇利の苦手なSNSを多用し、世界中の若者の心を掴んだり、信じられないくらいの大勢の人を巻き込んだり、一緒になって盛り上げたり、そんなことまで得意だった。
彼の準備しているアイスショーは、スケートの堅苦しい紳士淑女の世界をぶっこわしただけではなく、色々なジャンルの最先端とコラボしていたし、どこかインド映画のようなコミカルさを見せることもあったり、勇利は彼からの誘いがあれば、自分への勉強もかねて、必ず日程を調整した。

勇利と同じく年を重ねたピチットチュラノンは、嘗ての競技時代と比較すると年をとったのだろうが、相変わらず愛嬌のある可愛らしい姿だった。年齢不詳。不思議だ。彼は結婚し、子供も生まれていい父親になっていた。
ピチットくん!と声を掛ければ、かわらない人懐っこい笑顔でピチットは勇利!と叫んだ。
ピチットは片手にファイルを持って、中には乱雑に紙が突っ込まれていたが、勇利にヘルプ!と叫んだ。

ピチットは同窓のよしみで、結構人使いが荒い、と勇利は思う。けれど勇利は舞台裏が好きだったし、何かひとつの作品を作ることも好きだったので、喜んで巻き込まれた。
彼はもはや表現者として舞台に上がることは少なくなったので、替わりに彼の後輩達が今回は沢山出演するらしい。

「このレーザーいいね~」
関心したように勇利はピチットの後ろで唸った。既存の設備でお金を掛けず、いかに効果的に見せるか。ピチットは道具と空間の使い方がうまかった。

放射線状に伸びるレーザーは翠の草原のようで、時折芸術的に交差する。跳ねるスケーターたちはまるで草を掻き分けているようにも、おぼれているようにも、飛んでいるようにも見える。
ピチットとはかつて、デトロイトから少し足を伸ばしてシカゴにも行った。街の光、ネオン、ポールダンス、なまめかしい水着の女性、男性、ストリップ、スロット、カジノ、アルコール。勇利はピチットの国にも遊びに言ったこともある。女、男、女、男、概念なんかどうでもよくなる、美しいショー。人生は快楽に溢れている。美しいものだけは十分に人間の感情を揺さぶることはできない。
今回のピチットのプログラムは、エロティックで、サイキックで、ボールハウスで踊り狂っているときのような、こおりが割れそうなプログラムだった。

「わくわくするね~」
にこにことあの時と変わらない笑顔でピチットが笑った。世界に僕らを見せ付けてやろうね!デトロイトの狭いフラットで、二人で語った夢は、けして夢物語ではない。









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by kanae-r | 2017-01-23 21:56 | YURI ON ICE | Comments(0)