当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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北京、10月






勇利にとってはじめての正式なコーチデビューは、思った以上に良い成績を収めてくれた優秀な生徒のおかげで、勇利にとっても思い出深い、あの競技会場に再び足を踏み入れることを許してくれた。
今季、バンクーバーのスケートクラブで勇利は何人かの生徒を指導し、そのうちの一人はグランプリシリーズに出場した。アサインを彼にみせると、中国は初めてだ、と緊張した面持ち。シニアに上がって2年目だという彼は、親元を離れこうして一人でカナダに拠点を置いている。
勇利の所属するスケートクラブは、トロントの有名なスケートクラブには到底足元にも及ばないけれど、第二のトロントを目指すといって、かつて世界で活躍した選手を積極的にコーチとして迎え入れた。
勇利は今年、カナダでかつてのエージェントと一緒に会社を設立した。今はこうやって、若者たちが競技できる環境を整えることや祖国に還元することが今まで自らが回りの人からの愛によって氷の上で生きてこられたことへの恩返しだとおもっていたし、世界で戦って初めて日本の選手の不遇に憤りを覚えた。金銭面での支援がなければこんなに金のかかるスポーツはやっていられない。
バンクーバーでは勇利の考えに賛同し、応援してくれるパトロンとの出会いもあった。アカウントのことや会社のことを、エージェントとそれぞれの立場を相談したり、既にタイで成功しているピチット(彼は祖国のためにクラブを設立した!)のアドバイスを聞き入れながら、勇利は慎重に準備をした。

北京では、サンクトペテルブルクから離れられないヴィクトルの後輩も出場すると聞いている。ヴィクトルは偶然にも勇利と同じ名前の、ユーリプリセツキーという若い選手の振り付けを今季担当することになったらしい。彼はむずかしいむずかしいと常に悩んでいた。直接演目を見たことがない勇利は、とても楽しみだった。今日は彼も帯同すると聞いている。

勇利の生徒は、不安そうな顔で会場をきょろきょろと見渡している。懐かしい競技場のにおい。勇利は彼の生徒が安心するように、柔らかく肩を抱いて歩き出した。
君は十分やってきたよ。集中してごらん。いつものバンクーバーのリンクと同じだよ。

会場には熱心なカナダ国旗を振る応援者たちがいる。かつて勇利と競い合ったJJもそうだったけれど、カナダの応援はとってもとってもハートフルだった。君の家族がスタジアムでこんなに応援しているよ、声には出さず勇利はぎゅっと彼の肩を抱いた。小柄で小さい、発展途上の身体。
緊張で身体が震えている。だいじょうぶだよ、君の魅力を氷の上でみせてごらん。

SPの結果は、ロシアのユーリが一番だった。鮮烈なシニアデビューだ。妖精のような見た目、しなやかな体躯。中性的な風貌を最大限に生かす姿は、かつての若かりしころのヴィクトルを彷彿とさせた。
勇利の生徒は三番手につけた。誰に似たのか、くじ運のとっても悪い彼にしてはよくやったと思う。点差はそこまで開いていない。まだまだ挽回のチャンスはある。勇利には教え子が一番になる絵をちゃんと描けている。

ホテルに戻って疲れがたまっていたのか、夕飯のあと眠たそうにして、ベッドにもぐりこんだ教え子を確認したあと、(彼はどこでもどこでも寝れるおおらかで神経の太い子だった)勇利はスマートフォンを確認した。21時15分。彼からの着信だった。同じホテル。フロア違い。早く会いたい。

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by kanae-r | 2017-01-24 06:06 | YURI ON ICE | Comments(0)