当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

ヘルシンキ、3月

>



俺はカツキコーチを尊敬してます。あなたのスケートもファンだったが、あなたの精神と行動力に。
勇利の生徒は優秀なスケーターだった。彼は身体が硬く、バレエを得意としていなかった。しかし彼は、自分を持っていた。彼は昨年度優秀な成績を収めたが、いまひとつ殻を突き破れない、その気持ちで彼の祖国を飛び出したという。彼の祖国はフィギュアスケートがさかんではない。彼がバンクーバーで勇利の目の前に立った時、不退転の決意で、戦う者の目をしていた。
カザフスタンの英雄と呼ばれる彼にふさわしいプログラムを作ろう。勇利はわくわくした。こうして後進の者達のコーチをすることが勇利にとって、自分が踊ること以上にわくわくすることに気づいて、どうしてもっと早くコーチの道を選ばなかったのか、と思ったくらいたった。

俺がこうして競技を続けられるのは、あなたが築いたクラブとスポンサーの応援があるからだ。金メダルであなたに恩返しします。
四大陸ではじめての世界選手権を決めたオタベックは、勇利に力強く宣言した。勇利は泣きそうになってしまった。君ならできるよ。僕は信じてる。




勇利はいつだって、彼らが勝てるプログラムしか作らないと決めていた。
シーズン前、彼の意向を踏まえていくつか曲を提案し、二人でセルゲイヴァシリエヴィチラフマニノフのものに決めた。過去、既に偉大な選手達が彼の曲で素晴らしいプログラムを踊ったが、それ以上に、伝説になりうる良いプログラムを完成させる自信があった。
自らの人生で証明したい。彼のその言葉をヒントに勇利は振付した。ロシア正教を思わせるゆったりとした和音連打。ハ短調は彼の悲しみをしめす。より抒情的な第二主題。劇的で目まぐるしい展開部が楽器法と調性を変えながら曲調は力強さを増していく。彼の人生は波乱だった。恵まれない環境、彼は努力した。チャンスを作り出した。道を切り開いた。思い悩むような短調のメロディー、対照的な明確で力強い主題、モチーフは断片的に現われたり、二つの主題が融合したりする。既存の形式にとらわれない自由さ、最後のカデンツァにはハ長調の全合奏が最大の盛り上がりを作り出す。彼の国は独立不羈の民なのだという。

勇利が彼と話し合ったところ、彼はバレエを選ばなかったことに引け目を感じていた。女性らしさだけがスケーティングではない。
彼はオフシーズンでグランプリシリーズで出来た新しい友人と友好関係を広げる中で色々な発見もしたようだった。彼は言葉が少ないが、その友人はバレエが得意なようで、全くの正反対のタイプなのだそうだ。オタベックは勘のいい天才肌ではない。しかし彼は努力の天才だった。諦めが悪かった。だから勇利は彼のスケーティングの武器として、四種類の四回転を教えた。

勇利はぎゅ、と彼の手を力強く握った。彼のルーティーン。彼は例えたように、これから彼は戦いにでるのだ。

シーズンを通じて一つのプログラムに向き合う課程は、どこか自分との向き合いにも似ている、と勇利は思う。強みは?弱みは?観客のニーズは?コンペティターは?表現したいものは?伝えたいものは?自己満足なのか、パフォーマンスか、スポーツか?勝ちに行くためには?なんのために滑るのか?

それぞれの選手のための武器やプログラムはあくまでもきっかけで、それをどう昇華し、作り上げて行くのかは選手次第だ。

リンクの中央に滑り出る選手から目を離さずに、祈るようにして腕を組んで、身体の震えを抑える。いつだってそうだ、武者震いのような、緊張感のような、高揚感のような。彼の目は力強く、てっぺんを見据えている。



[PR]
by kanae-r | 2017-01-24 08:19 | YURI ON ICE | Comments(0)