当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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オディール・マルコッティの話 1  「序奏」

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魔法にかけられた鳥を描くように物悲しい主題を奏で、哀愁と心痛の雰囲気を醸し出しています。



「ツナヨシ・マルコッティが死んだ」
その言葉を聞いて男は息を飲んだ。
それから、一瞬にして荘厳なる彼の姿が脳裏に浮かんだ。あの優しく、気高く、圧倒的な強さを持った、春の陽光のような偉大なるドン・ボンゴレが。
激情を飲み込んで、男は静かに呟いた。
「ああ、偉大なるドン・ボンゴレが神の御許に行けますよう」
思うところがあるのだろう、間を置いて電話越しの男が言う。
「プログラム通りに始めよう。どれ位で行ける?」
黒衣の死神の言葉は静かである。男は答えた。
「一個体にしろ何個体にしろ、かかる時間は同じだ。正常に発生するかはやってみないとわからんが、二・三年は欲しいな」
「成長促進できるか?」
「できるが、脳や心の方はどうだか」
「俺に心当たりがある。精神科医なんだが腕は確かだ」
「わかった、後できてくれ。ドクターシャマルには連絡しておくよ」
電話が切れて男はゆるゆると息を吐き、机の奥底から冷凍室の鍵束を取り出した。
今夜は研究室に生憎彼一人しかいなかった。誰かしらいたならば、弔い酒でもできたのに。
彼は立ち上がって、にびいろに光る鍵束を見つめた。


シャマルが電話を取ったとき、数日前の連絡を聞いていたので覚悟がある程度あったように思う。
よく知った研究者の声に、ああ、とシャマルは嘆息する。
「母体の用意は?」
「時間はあるからな、おいおい準備しよう」
くそ、とシャマルはウォッカを流し込む。のどが痛い。
「何でイイ奴らばっかりすぐ死ぬんだろうな」


シャマルが電話をかけたとき、向こうはまだ外にいたらしい。
「山本、大丈夫か?」
「・・・ああ、シャマルのおっさん」
山本の声は掠れていた。その向こうは、怒号やら泣き声やら騒がしいようだった。
「獄寺は?」
「ここにいるぜ、ぼんやりしてるけど意識ははっきりしてる・・ああ、大丈夫だそうだ」
「・・・連絡は聞いた。残念だったな」
疲れきった笑いが返ってきた。
「お前らのやることはまず、そこにいるやつらに後追いさせないことだ。ツナの気持ちを無下にするな」
「あぁ、わかってる」
「それから、もうひとつ――」
「わかってる」
「「ドン・ボンゴレのために」」


ドン・ボンゴレの右腕から電話がかかってきたとき、男は眠れないまま酒を飲んでいたのだった。
「獄寺さん」
「ドンが亡くなった」
彼がそう言う。男は思わず呟いた。
「あぁ、偉大なるドン・ボンゴレに魂の平安がありますよう」
彼はく、とのどを鳴らしてから言った。
「手筈は約束のとおりに」
彼の声は掠れているようだった。
「ええ、わかりました」
電話が切られ、男はぼんやりと机の引き出しをあける。そうっと奥に手を入れ、金具を引き上げた。
ガタン
小さな音とともに床板が一枚外れた。
男は慎重にかがみこんで机のしたのその板をもちあげる。中には金属製の箱があって、それをそうっと取り上げた。金属の蓋をあければ、中には数年前と変わらぬ、白いミトンと白い封筒。
男にこの封筒を開けることはできない、なぜならそれは死炎印と同様の仕組みで、宛名の者以外に開けられると死ぬ気の炎で燃えてしまうからだ。
男はそれをよくわかっていた。なぜならそれを開発したのは彼自身なのだから。
「・・偉大なるドン・ボンゴレのために」
そして電話をかけるべく受話器を取った。


電話で呼び出された少年は眠かったけれど、男の説明を聞いて一気に眠気が吹っ飛んでしまった。彼のゴッドファーザーであるドンその人が亡くなったというのだ。
「ドンとの約束を覚えているな?」
少年はしっかりと頷いた。
少年が幼少時に巻き込まれた事故のせいで少年は言語がうまく操れず、頭が少し弱かった。そのために他人からは馬鹿にされたり、からかわれたり、傷つけられたりした。そんな彼に偉大なるドン・ボンゴレは名前と、仕事と、住む場所を与えてくれたのだ。少年はドンの住む屋敷の雑用をしていた。そして、ドンのためには何だってする覚悟を持っていたのだ。
彼は祈りの言葉を口にする代わりに十字を切った。ドンが神の御許にいくことができるように、だ。
少年は紙袋を渡された。中には白い手袋と手紙、少年は確認した、と軽く頷く。
裏の戸から裏通りへと出る。息を吐いたら白く煙った。
少年が町を駆け抜けるころ、空は白み始めていた。夜が明けるのだ。
東の方でもうもうと炎が燃えている。少年にはよくわからなかったが、ここ数日そこは火事のようだった。
彼は三十分ほど駆けて、クリーム色のドアの前に辿り着く。床にでもある一軒家である。
呼び鈴を押すと、しばらくして物音がした。
「・・どなた?」
ドアから顔を覗かせたのはちょうど彼の亡くした母親と同年代の女性。優しそうな雰囲気は少年の目には眩しかった。手の届かない絵本のよう。
少年は大切に抱えてきた紙袋を渡し、開けてみて、とジェスチャーする。
女性は袋を覗き込み、手紙を取り出した。裏に書かれた名をみてその顔がさっと青ざめる。
「・・・・・・あぁ」
女性は目を閉じた。
「ゴッドファーザーが亡くなったのね」
その唇から祈りの言葉が流れ落ちる。
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by kanae-r | 2007-04-18 21:33 | odile>reborn | Comments(0)