当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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オディール・マルコッティの話 2  「情景」

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彼と友人たちは翌日に控えた成人式を、ワインと踊りで祝っています。領地からは若い農民が訪れ、彼を祝福します。




オディールは冷たい風が首元に流れ込んできたので、かすかに身を強張らせた。三ヶ月前に”生まれた”ばかりなのだ。ぬくぬくとした、あたたかな、羊水にいつまでもいれたら良かったのに。
「何考えてる」
傍らで本を読んでいた全身黒のスーツで固めた男が顔も上げずに言った。
オディールは一つ瞬きをして何も、と口の端を上げた。
それはオディールにしてみればドクター・シャマルやドクター・イーピンのように笑った、のであるが、顔の筋肉はみしりと悲鳴をあげたので、それはすぐに元に戻ってしまった。
その一連の顔の表情の動きをいつのまにか見ていたらしいその男、リボーンは何の表情を浮かべることもなく再び視線を下へと落とす。
オディールは”なんとなく”彼はその表情――つまり笑おうとして失敗したオディールの表情を快く思わなかったのだ、と思った。
思った、途端リボーンはそんなことはねぇ、とニヒルに笑ってオディールの頭をなでる。
オディールは人に触られることがいまだ両の手に足りるほどだったので少し身を強張らせた。
その躊躇いに臆することなく、手は離れていった。
離れて初めて頭の上がすうすうした。

窓を開けて空気の入れ替えをしていたドクター・イーピンは気分はどう?とオディールに尋ねる。
「特に問題は」
オディールはドクター・イーピンの目を見て言う。
イーピンはほっとしたように笑った。今、オディールは今回八度目となる「入力」を終えたところなのだった。居心地のよいオディールの小さな私室に、不釣合いな大きな機械。
生まれて二年のオディールはその見た目を2の3乗に、知能は2の4乗に成長促進されていた。
こうした毎日の機械や薬物による「治療」はすなわちオディールを、大人大人させようという試みのもとにある。
「入力」はオディールの知能、知識、感情、人間性をプロジェクトのゴールである2の4乗――16まで引き上げるものだ。
精神科医であるドクター・イーピンはこの世界に不釣合いな温かい人柄である。オディールは彼と会話をするのが好きだった。
「今回の入力も順調、あとはもう微調整ってとこだね。それが終わったら修行に入っていい」
「そーか」
嬉しそうにリボーンが笑う。
「修行?」
「てめーのその軟弱な体を鍛えてやるんだよ、戦闘能力のねえボスなんぞ死ぬだけだ」
ねっちょり鍛えてやるからな、と歌うように言う。
たしなめるように窓を閉めにかかったイーピンが言った。
「リボーン、最初から飛ばさないでよ」
「スパルタだからな」
イーピンは諦めたようにため息をついた。

リボーンは彼の保護者である。彼いわく、オディールの父親であるツナヨシ・マルコッティという人物はマフィアのドン・ボンゴレで――ボンゴレファミリーの十代目だったそうだ。
「立派なドンだったかもしんねぇな」
リボーンはオディールを見ることなく愛銃を磨きながら言う。
「誰にも公平で慈悲深いとも言われた。但し裏切りには容赦はしなかった。圧倒的な強さでもって相手を降伏させる。ファミリーは信頼という強い絆で結ばれていた。ボンゴレの世界における地位も確固たるものになった」
「・・」
「だが同盟ファミリーの裏切りで十代目は死んだ。生憎世継ぎを残せなかった。それに先代の世継ぎ争いで他のボンゴレの血も途絶えたに近い」
「・・」
「十代目が就任した際に万が一に備えて合意の上で冷凍精子を保存することにした――」
「・・」
「お前はそうしてドンになるためだけに作られたんだよ、オディール」
そう、とリボーンは続けた。優しく、言葉をつむいで。
「恨むなら俺を恨めよ、ツナを――望まぬ形でドンにしたのも俺なんだから」
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by kanae-r | 2007-04-18 22:22 | odile>reborn | Comments(0)