当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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オディール・マルコッティの話 3  「パ・ド・トロワ」 

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ふたりとひとりの6つ。





あ、とオディールは思った。そっと窓の外を覗けば男が二人歩いてくる。
一人は栗色の髪をしていて、片目を長い前髪が隠していた。黒いジャケットにパンツ、腰のあたりに見たことのない武器を下げている。もう一人は壮年の男で、崩したスーツ姿にニットの帽子をかぶっていた。武器の姿は一見無い。
「リボーン」
家庭教師の名を呼べば、彼はオディールの後ろからひょいと外を覗いた。
リボーンはお、と声をあげる。
「バジルにモレッティだな。若い方がバジル、十代目の門外顧問でお前の門外顧問になる」
門外顧問の話はすでに聞いていた。ボンゴレにあってボンゴレにない、ドンに告ぐ二番目の実力者だ。
「もう一人は殺され屋のモレッティ。ボンゴレへの忠誠心を見失わない奴として昔から評判がある」
殺され屋の名ははじめて聞いた。
「殺され屋とは?」
「どうしても死体が必要なときに死んだ振りができる奴だな、自分の心臓を止められるんだ」
俺が呼んだ客だ、とリボーンは言って椅子に再び腰掛ける。飲みかけのエスプレッソを口にした。
オディールはまた机の前に戻って文字の練習を始めた。イタリア語に英語――日本語もである。「入力」によって文字を知って、言葉は話せるものの、手に馴染まないうちはなんとも歪な文字になってしまう。


「はじめまして、オディール殿」
にこりとバジルは笑った。
「あなたのお父様とも、お祖父様ともよくして頂いておりました」
オディールはほんの少し、口元に笑みを浮かべるようにした。相手に不快感を与えず、相槌となるように。
「バジルは家光の弟子だった」
リボーンが付け加えた。家光とは十代目の父親だったと記憶している。そして家光は九代目の門外顧問だったはずだ。
「オディール・マルコッティです。よろしく」
「オディール殿は今年でおいくつですか?」
「11になります」
11、とバジルは目を見開く。これは体の実年齢に3を足すべきだ、という家庭教師の助言に従ったものである。
「沢田殿は拙者にも、ボンゴレにもあなたのことを9年も隠していたのですね」
バジルは怒った顔をした。はは、と笑ったのはモレッティだった。
「ドンはそれだけ十一代目が大事だったのさ」
オディールは口元に笑みを浮かべたままでいる。
読心術に対する閉心術はこうして感情を表に出さない、けれど不自然にならないこと、と教わったところだ。リボーンが今までオディールの考えることを手に取るようにわかっていたのも彼が読心術に長けているからだったのだ。
ちなみにその話を聞いてオディールは愕然としてしまい、恥ずかしい、という感情を味わった。
オディールの心のどこかにいつもある、温かくて狭くて居心地のいいあそこにあこがれる気持ちもわかっていて、何考えてる、と厳しい叱責がとんでいたのだった。
「それにしても年の割にしっかりしていて、さすがはドンの息子さんだ」
「ええ、本当に。将来が楽しみです」
リボーンがにやりと笑う。
「俺が育てたからな」
「昔も同じこといってましたよね、ドンの就任式の時」
「そうですね、懐かしい」



オディールの住む屋敷の外には広い庭があった。
そこに三人出て、さて、とリボーンが言う。
「バジル、かるーくけなしてやってくれ」
「拙者で良いのでしょうか」
「これから体を鍛えて、ガンガン強くなってもらわねーとな」
「はじめて手合わせするんですよね?」
「遠慮はいらねーぞ」
オディールはどこか他人事のようにその会話を聞きながら手の中にある一丁の銃を見た。Xのロゴが大きく刻まれたそれは十一代目の戦闘用武器になるらしい。死ぬ気の炎というもの、その生命エネルギーを弾にして、撃つのだそうだ。
オディール、とリボーンが呼んだ。
「それは没収だぞ」
「・・」
「まずは肉弾戦からだ。そこでお前にはいったん死んでもらおう」
にやりとリボーンが笑った。がちゃ、と彼の手の銃が音を立てた。
オディールは背筋が粟だった。
死ぬ。そのことはオディールがいつも恐怖していることだった。それは例えば自分が用済みになったら、あるいは十一代目に不適格だと判断されたら、簡単に殺されてしまうのではないか、とか。十代目の冷凍精子はまだあまりがあるというし、実際受精卵もまだ残っていて冷凍されているのを聞いていた。だから、オディールは用済みになって、また誰かが作られて、十一代目として教育されたり、とか。
閉心術を覚えたけれども、隠し切れない恐怖が徐々に顔に表れていく。
「・・!」
後ずさるように一歩、二歩、オディールはリボーンから逃げた。
殺される。殺される殺される。怖い、怖い、怖い。
「懐かしい」
くすりとバジルが笑う。リボーンがく、とのどを鳴らした。ああ。

そして。
突如、オディールの中に何かが煮えたぎる感覚が満ちた。それは一気に表面に露出して、額のあたりがぼう、と熱くなる感覚に襲われる。同様に手の中の銃にも熱がこもったように感じた。
(――殺されるくらいなら――死ぬ気で――)
オディールは体が導くままに、セーフティをはずし、キュ、と体を固定して、狙いたがわずリボーンを撃った。リボーンはオディールが銃を握った瞬間に、は、と体を引いて、銃弾の軌跡に合わせるようにトリガーを轢いた。

オディールの銃弾はリボーンの銃弾にはじかれ軌道を変えて、庭の奥の森に突っ込んでいった。あたった木は一気に轟音とともに炎を纏う。みしり、みしり、と悲鳴をあげて倒れた。
身をかがめたリボーンの瞳と、立ち尽くし銃口を向けるオディールの瞳がかち合った。
その額に、煌々とした炎を上らせ、金色に目を輝かせる、その姿に、バジルは息を飲んだ。



リボーンの静かな説得に正気を取り戻したらしいオディールは、今度は自分の犯した失敗に気づき、再び恐怖していた。再びオディールの暖かな、居心地のいい小さな部屋で、今度は三人でオディールを囲む。
「大丈夫ですよ、オディール殿、誰も殺すなんてことしませんから」
「オディール、すまなかった、俺の説明不足だったな」
帽子を下げてリボーンが言う。椅子でがたがた震えているオディールにココアを持ってきたのはモレッティだった。
「十一代目、お飲みになってください」
優しい声にオディールは身を縮ませる。けれどもバジルに下から笑いかけられて、それを受け取った。味などわからなかった。
すぐにマグカップを返し、片腕を抱く。
「俺が撃とうとしていたのはボンゴレの特殊弾である死ぬ気弾。それを撃つと一時的に死んだ状態から、死んだその瞬間に後悔したことを成そうと復活する弾だ。それによりその人間の潜在的な力を引き出す――だが俺に殺されるという恐怖でお前は自力で死ぬ気になった。額に死ぬ気の炎がともり、その銃が使えるようになる状態だ。自覚はあっただろう?」
こくり、とオディールは頷いた。オディールが返したココアをちゃっかりのみながらモレッティが言う。
「結果オーライじゃないですか。十一代目は無事に死ぬ気になれたわけだし」
「そうですね、弾なしに死ぬ気になることはそう簡単なことではありませんよ。あなたのお父様も、拙者も、死ぬ気弾や死ぬ気丸を使っていましたから」
「そうだぞ。よくやったオディール」
リボーンはそういってオディールの頭を優しくなでて、にこりとわらった。けれども、オディールには、その瞳が本当に笑っているようには思えなかった。冷え冷えとした黒い眼球に、オディールは湧き上がってくる恐怖を、死ぬ気で抑えたのだった。
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by kanae-r | 2007-04-19 00:01 | odile>reborn | Comments(0)