当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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オディール・マルコッティの話 12 「テンポ・ディ・ヴァルス」





地下は華やかなオークション会場だった。
取引されるのは、様々な、珍しく、世の中には訳あって出ない宝物達。骨董品、国宝、美術品、宝石、珍しい生物、土地、権利、武器、あらゆるもの。オークショマニアが垂涎の物達。
主催者が会場へ降り立った三人を迎え、頭を下げる。
会場には、能面のような仮面に、長い髪、焼けた肌の女性達が立っている。クローンかと見間違うばかりに、いつの時代のチェルベッロも同じ容姿をしていることが、入江には不思議でならない。


「こちらへ」
案内された部屋には、オディールが見知ったドン達もいた。
そのうちの一人、アジア風の顔立ちの男が、立ち上がり握手を求める。
「重慶はどうですか」
「だいぶ落ち着いてきました」
王という男は、一見普通のビジネスマンの出で立ちをしている。高すぎないスーツ。若く、柔和な顔立ち。その辺をあるいていても、まったく違和感はなく、それでいて、重慶の情報操作で荒稼ぎをしているファミリーのドンであった。
「だいぶ取り締まりが厳しいようですね」
王は困ったように笑う。
「国が一斉に取り締まったので、大きな組織がいくつも潰れました。ビジネスチャンスです」
入江が来たのは、ドンボンゴレが彼との取引を望んでいたからに他ならない。

「ああ、いいですね」
エルヴィーナ公は食い入るように、強化ガラスの向こうで行われる競りを見やる。早速隣に控えたチェルベッロに何事かを注文し、同じ姿かたちをした女達が、其れに応えて動いていった。
余計なことはめんどくさい、というオディールの性格を知ってか、彼女の審美眼は確かなものなので、こういった場で協力してもらうのにはいいのだ、との入江の助け舟だった。
何かが競われ、落とされる、という商売は、オディールは好きではなかった。

「今日は良い日でした。望んだものが落札できた」
王が言う。
「こちらの要求したものは準備できましたか」
オディールの言葉に、王はええ、とうなずく。
「貴方との取引に必要なものは、全て揃っています」
王が入江にデータを渡す。
入江は持ち込んだ端末で、データを読み取り、回線の準備をした。
「確認できました」
入江の言葉に、オディールがうなずく。
「では約束どおり、今から始めます」
入江の端末から、膨大な取引データが吸い上げられ、発信されていく。
作業の一連を見守っていた王が、ほっとした表情になった。
「ありがとうございます。この恩はわすれません」
いいえ、とオディールが無表情で応える。
「王さん、私との取引条件はわかっていますね。戦争、人身売買、薬、殺人、武器はやらない信条だ」
静かな声には圧力があった。
王の表情がこわばる。
「ええ、わかっています。貴方の信頼を裏切ることはしない」
「その言葉、忘れませんように」





++






「公、アレーナ・ディ・ヴェローナは如何です」
「ええ。とても素晴らしい」
高揚した頬で、イタリアの貴族が笑う。
舞台の上では、夕闇。舞台照明が赤く燃え、歌い手も踊り手も赤く染まる。
ごきげんよう、と女性は護衛に守られ、去っていく。
荒稼ぎをしたイタリアの黒い貴族が、この後落札した品物をどのように扱い、捌くのか、オディールには知る余地もないし、興味も無かった。
それでもあの場で彼女が政界のドン達に向けてボンゴレの威信を示してくれたことには、改めて感謝をしなければならない。






護衛と入江を屋敷に先に返し、オディールが隣に立つ護衛を見上げる。まだまだオディールは、山本の背にはぜんぜん及ばない。
「この後、フリーでいいかな」
これが獄寺や他の守護者であったならば、絶対に融通が利かない。
「夜遊びか?」
「うん、そんなところかな」
「気をつけろよ」
一時間後に迎えに来る、と言ったのを確認し、オディールはその場を離れる。









街は祭りの熱気に溢れていた。

ジークは打ち上げ会場から離れ、高揚した体温を覚まそう、と夜風に当たる。
「・・・っ」
不意に、熱を胸元で感じる。
(リング?)
一瞬感じた熱元は、首から下げたリングのようである。
思わず手を当て、それが気のせいだったかのように、すぐ何事も無い、ように反応は無かった。
「・・っ!」
リングに気をとられている瞬間に、目の前に少年が来ていたらしい。至近距離から顔を覗かれて―
(天使みたいな)
ふわふわの金色の髪の毛が、風に吹かれて、遠くの照明の赤い色からか、琥珀色の瞳がきらきらと光っている。
どこか、東洋系の顔立ちの―。
―顔だけを覗かれていたのではなく、少年はジークの顔と―今しがた熱を持った、リングをちらりと見たように思った。
誰、と質問をする前に、びゅおう、と熱をもった強い風が吹いて―
そして少年の姿は遠くなっていた。
(なんだったのかしら)
踊って疲れて夢でもみているのかもしれない。その一瞬の出来事を、彼女はすぐ―忘れてしまった。








「おう、お帰り、オディール」

山本はふらり、と現れて、にこりと笑んだ。
「山本、誰、それ」
傍には、化粧をしっかりとした、アルコールをかなり嗜んでいるような女性がいて、山本にしなだれかかっている。
「ん、しらない。今会った」
「おんなったらし・・」
アルコールの匂いが鼻につく。
「タケシー、子供いたなんてー」
「おう、ごめんなー」
山本が適当にあしらい、女性を近くのベンチに座らせて、そしてかえろっか、と車を寄せる。
「山本の子供じゃないし・・」
「まぁ、いいじゃん」
山本はにこにこしている。
「で、彼女に会えたの?」
オディールは山本の問いに、そんなんじゃない、とはぐらかしたつもりでいた。
しかし、山本がいつも以上に、どうもにこにこしているようで気になった。
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by kanae-r | 2014-01-30 23:16 | odile>reborn | Comments(0)