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当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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Afārīt







「またか」
飽きれたようにザンザスは言う。
自室にかえってきたとたん目に付いた、気配を感じさせずにベッドの上に上がりこんでいた綱吉がにこりと笑った。
厳重なセキュリティがあるはずのこの部屋も、綱吉だけは意味をなしていない。
シーツの上に、亜麻色の髪が泳いでいる。かつて出逢った頃と比べて、ずっと髪は伸び、美しい光沢を放つ。

寝転びながら片手に酒を持った綱吉が、ざんざす、と小さく呼んだ。
「今日はどうした」
はぁ、とため息をついてネクタイをはずす。ここのところ一年。”何か”あると、綱吉が荒れる、というのは、それとなく張った情報網の中で、伝わってきている所であった。
人の部屋に上がりこんで、甘えて、寝て行く。
「今日は人をころした」
ふふ、と笑う。綱吉が持っている酒を手渡され、そしてそれを一息で飲み干すと、強い度数に少し顔をしかめる。こんな強いのをどれだけ飲んだのか。
吐くなよ、と心の中で思う。
「そこまで酔ってない」
昔貧相な体つきだった綱吉が、何の不思議か、女性らしい色気を出すことがある。
ナイトドレスは明けの紫色。彼女は無意識に、無防備な格好をしてくる。陶磁器のような、透明な肌。傷つけてくれ・といわんばかり。
「そうだよ」
心を読んだのか、綱吉が言った。
蕩けそうな琥珀色の瞳が水を帯びている。腰掛けたザンザスの首にゆるゆると手を巻きつけ、しなだれかかる。きっとこれで、落ちる男はいないはずだろう。
人をころしたあとの、高揚、絶望、悲壮感、不快感。
蕩けそうな、琥珀色の瞳。但し、その色は怒り、に近い気がする。

きっともてあましているから、いつもどこかで発散しているのだろう。
「消えろ」
睨み付けると、艶やかに哂う。
「それは、嫌だ」
「他にも手段があるだろう」
何を指しているのか、綱吉がわかったのか、組織の名前を汚すわけにはいかない、と噛み付くように綱吉がザンザスの首筋に口付けた。
「お前、俺のこと、嫌いだろ、だからいいんだ」

がり、と。歯を立てられたので、引き剥がして押し倒す。首を絞める。
わざと怒らせるようなことを。その挑発に乗ることが、苛だたしい。
「命令なら、従う」
絶対零度の琥珀色の瞳が、絶望の炎で燃えている。

「お前も、そう望むだろう?」


瞳が絶望の色。
このままでは精神がやられる、
かつて綱吉に救われたことのあるザンザスは思った。
by kanae-r | 2014-02-12 04:01 | Alf Laylah wa Laylah