honeydew
2015年 01月 25日
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紫煙が上へ上へと昇っていく。
一本、流れるように立ち上るそれの煙を、写す瞳が、
青いディスプレイの光を受けている。
「煙草、吸ってるのか」
「個人の嗜好ですから」
「失礼」
低い声は、思ったよりも近くから聞こえた。
「返して」
伸ばされた手が、口元から煙草を奪っていった。
「前は吸わなかっただろう」
「嗜好は変わるものです」
朱は暗い闇の方へ、手を伸ばして、煙草を奪い返した。
息を吸う、吐く。
かたかた、とキーを打つ音と
くつくつ、と音が奥から聞こえる。
宜野座も変わった、
朱が画面に目を固定したまま、そう声には出さないが、思っている。
くつくつ、と煮える音は、キッチンに立つ宜野座の方から。
酒など、以前の彼なら絶対にのまなかっただろう。
朱の嗜好に合わせて、彼はお酒を嗜むこともあったし
スーパーオーツではない、高価な天然の食材を使った、食事を朱が好んでいることを知ってからは
共に食事を取る時は、その嗜好に合わせて準備をしてくれている。
「貴方は、ホロが嫌うようになった」
「嫌い、とまではいきません」
「そうか」
温かい、白いシチュー。
「パンも焼いたんですか」
「材料はそろっていた」
「・・・何でも出来ますね」
朱は首をこきり、とならし立ち上がる。
「雪が」
静かな夜だった。
移動日として設定されたその日は、北陸の穀倉地帯におかれた、無人の駐屯地に到着して終わった。
北陸の穀物基地にテロリストが逃げ込んだ、という情報が公安局にもたらされたのは午後すぐのこと。
データの分析が出来るまで、待機、というのが局長からの指示。
それでは間に合わない、と朱は何か機械を弄っているようだったが、
旧式の家には、アクセス回線がまず、繋がらなかった。
宜野座は非常にリラックスしているように見える。
朱の所には、一係に所属する者たちの色相データは日々届いている。確かに、執行官に戻ることもできるのではないか、と思うほど、
宜野座の数値は回復してきていた。
こうした業務の間に温かい食事にありつけるのはありがたいことだった。
白い湯気を上げて、
温かいシチューと、パン。
幸せを少し噛み締めて、そして頂きます、と小さく朱はつぶやく。
紫煙が上へ上へと昇っていく。
一本、流れるように立ち上るそれの煙を、写す瞳が、
青いディスプレイの光を受けている。
「煙草、吸ってるのか」
「個人の嗜好ですから」
「失礼」
低い声は、思ったよりも近くから聞こえた。
「返して」
伸ばされた手が、口元から煙草を奪っていった。
「前は吸わなかっただろう」
「嗜好は変わるものです」
朱は暗い闇の方へ、手を伸ばして、煙草を奪い返した。
息を吸う、吐く。
かたかた、とキーを打つ音と
くつくつ、と音が奥から聞こえる。
宜野座も変わった、
朱が画面に目を固定したまま、そう声には出さないが、思っている。
くつくつ、と煮える音は、キッチンに立つ宜野座の方から。
酒など、以前の彼なら絶対にのまなかっただろう。
朱の嗜好に合わせて、彼はお酒を嗜むこともあったし
スーパーオーツではない、高価な天然の食材を使った、食事を朱が好んでいることを知ってからは
共に食事を取る時は、その嗜好に合わせて準備をしてくれている。
「貴方は、ホロが嫌うようになった」
「嫌い、とまではいきません」
「そうか」
温かい、白いシチュー。
「パンも焼いたんですか」
「材料はそろっていた」
「・・・何でも出来ますね」
朱は首をこきり、とならし立ち上がる。
「雪が」
静かな夜だった。
移動日として設定されたその日は、北陸の穀倉地帯におかれた、無人の駐屯地に到着して終わった。
北陸の穀物基地にテロリストが逃げ込んだ、という情報が公安局にもたらされたのは午後すぐのこと。
データの分析が出来るまで、待機、というのが局長からの指示。
それでは間に合わない、と朱は何か機械を弄っているようだったが、
旧式の家には、アクセス回線がまず、繋がらなかった。
宜野座は非常にリラックスしているように見える。
朱の所には、一係に所属する者たちの色相データは日々届いている。確かに、執行官に戻ることもできるのではないか、と思うほど、
宜野座の数値は回復してきていた。
こうした業務の間に温かい食事にありつけるのはありがたいことだった。
白い湯気を上げて、
温かいシチューと、パン。
幸せを少し噛み締めて、そして頂きます、と小さく朱はつぶやく。
by kanae-r
| 2015-01-25 09:15
| Psycho-Pass