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当ブログsoireeは管理人kanaeによる雑多な二次創作を扱っております。苦手な方等はご容赦ください。


by kanae
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オディール・マルコッティの話 4  「パ・ド・ドゥ」





今日の客はオディールの守護者である獄寺隼人と山本武だった。
彼らは十代目の幼少時からの親友で、周りからは右腕・左腕と呼ばれ、絶対的な信頼を得ていたらしい。
「それにしても」
オディールの、小さな、居心地のいい暖かな部屋で、四人はテーブルを囲んで紅茶を飲んでいた。
「バジルが言ってたこと、ほんとだったなー」
「何言ってたんだ?」
シャマルがたずねる。リボーンは仕事でここしばらく屋敷にはいない。
「ツナにそっくりだって」
獄寺がいとおしげにオディールを見やった。その目線に含まれる感情はまずはじめにオディールに出会う人々が向けるものである。
「本当に、十代目の中学生の頃のようです」
「でもオディールのほうが全然しっかりしてんなー」
ははは、と豪快に山本が笑う。ぎ、と獄寺が山本をにらみつけた。
「俺もこいつを取り上げた時は似てね―なーと思ったんだが生まれたばっかりの頃だったからだな」
シャマルはやはり口がうまい。
生まれたばっかりの頃といってもオディールは人口羊水の中にいたり養育器の中にいたり培養器の中にいたので一体いつ生まれたのか定かでない。どの時点を生まれた、と言うかだ。
オディールは口元に笑みをたたえている。満足そうに山本が笑った。
「平凡感も無いし、ウン、大物になれるぞ」
「すでにたいそーな肩書き持ってるじゃねーか」
胡散臭げに言うシャマルは紅茶には手をつけず酒をあおっていた。部屋が酒臭くなるのはなぁ、とほんの少しおもったがまあいいだろう。
「で?いくつなんだっけ?」
「11になります」
これもリボーンの助言による二重・三重の年齢詐欺である。確かに年はあまり幼くない方がいい。
「ったくツナの奴、子供いたなんて何で俺たちに言わなかったんだろな、親友なのに」
「十代目は色々お考えだったんだ」
しかし獄寺は悲しみに耐える顔をしていた。山本同様そのことがショックだったらしい。
二人に言わなかったのも無理は無い。何しろオディールは実際”生まれて”二年しかたっていないし、十代目が死んだ時に存在すらしていなかったのだから。(半分の核相で存在はしていたが)
「11歳にしてはほんと大人びてるのなー。ランボと比べたら天と地の差だよな」
「当たり前だっ!アホ牛と十代目の息子をいっしょにするな!」
「はは」
シャマルが笑った。酒をぐい、とあおった。






「ふぅん、君が綱吉の」
やってきた人物3人にオディールははじめまして、と挨拶をした。
リーの紹介によれば、オディールの守護者二人に、幹部の一人、と言うことだった。
雲の守護者である雲雀恭弥はどことなく肉食獣を思わせる雰囲気で、なんとなくえらそうだった。晴の守護者である笹川了平は極限に明るい。オディールは彼の口癖である極限、と言う言葉を聞いてなんとなくlimitを思い出す。リボーンのスパルタのおかげである。残る一人はオディールが会う人物には珍しく女性であった。幹部の一人、三浦ハルという名らしい。挨拶するなり、ツナさんに似てますー!とハートマークを飛ばしながらハルがオディールに抱きついた。オディールは硬直した。身体の接触は好きではないのだ。
「名前は何だっ?」
了平が尋ねる。オディールはその声量に驚きつつも穏やかに答えた。冷静でない口調は相手に不信感を抱かせる。リボーンの授業で教わったことである。
「オディール・マルコッティと」
「笹川、もう忘れたの。赤ん坊に聞いてきたじゃないか」
「私はハルっ!ハルって呼んでください!」
「伺っています。三浦ハルさん、雲雀恭弥さん、笹川了平さんですね」
「はわーそうですよぅ!」
とりあえずオディールは自分の、居心地の良い、小さな、暖かい部屋に三人を通した。イーピンが紅茶を入れてくれている。
「遅いですよ」
イーピンが笑って言う。雲雀は肩をすくめて見せた。
「仕方ないだろ、こちとら立てこんでるんだ」
「まぁ優秀なハルのおかげで結構早く来れましたけどねー」
「自分で言っちゃ台無しだよ」
むきーと怒るハルを視界に入れつつ、なんとも元気な人たちだ、とオディールは驚いていた。今まで来た人たちはまだ物静かな方なのだろうか。
各々が席につき、イーピンは全員の前に茶を置いた。ご馳走様です!ハルがにこりと笑う。
「仕事が忙しいの?」
イーピンはハルにたずねる。
「まぁ、誰かさんが仕事を増やすんですよね、風紀を乱すって言って勝手に動くんですもん」
膨れ面になったハルが言う。この人はころころと表情が変わるのだなぁ、それとなく三人の人間観察をしながら自身もされているような感覚はあながち間違いではないだろう。
そう、もうまもなく彼らはオディールの部下になるのだから。
イーピンは明らかに雲雀を見て笑いながら、ふわりと香るクッキーを並べた。
「して!オディールはボクシングが好きかっ」
了平の問いに、オディールは一つ瞬きをしてから答えた。
「体術は一通り教わりましたが」
そうか!と朗らかに笑って了平はオディールの腕を取って立たせる。
「では表に出ろ!」
はいともいいえとも言う暇なくぐいぐいと腕を取りドアへ向かう了平の頭にばこんと雲雀のトンファーがあたった。

「それで、本部の方は?」
何だかんだいいながら了平と雲雀はオディールを外に連れ出しデスマッチを繰り広げつつある。室内に残りのんびりとお茶を続ける二人に外からの手合わせと言うには少々派手な轟音が聞こえてきた。
「年々辛くなってきます・・影を立てるにしろ、やはりツナさんの死亡説は広がっていますし」
「ザンザスも気難しいからねぇ」
代理、としても十一代目、としても彼は首を縦に振らなかったのである。むしろこの状況を楽しんでいる節さえあった。
「まぁ、二年、これだけ保っているのはさすが十代目と言うべきか」
十代目の築いた土台は堅牢であったのだ。ハルは誇らしげに頬を染めた。
「そうなんです、ツナさんは偉大なんです」
「まぁ安心してね、オディールはもうすぐそっちに行くから」
「あんな小さな子を送るのもかわいそうですけど・・ツナさんに似てとても頼りになりそうですね」
「いいえ」
イーピンはにこりと笑んだ。
「侮ったら駄目だよ、あの子はもう子供ではないよ。立派な十一代目になりつつあるもの」











六道骸は目を閉じていた。雪の降っている外では、犬と千種と凪が子供たちと遊んでいる声がする。板張りの床はしんと冷たく、体を横たえていると、それだけにいっそう意識を尖らせることができた。
けんー、これ似てない?舌足らずな声。似てらい!骸さんはもっとかっけーんらよ!
無邪気な声、ああなんと平穏なことか。意識の中にしんしんと降る雪が見えた。ついで灰色の空――、

それから、屋敷がみえた。
イタリアの灰色の空からも雪が降っている。
屋敷の庭で雪の中、少年と見覚えのある男たちが見える。
少年と対峙しているのは門外顧問だったような気がする。骸には関係の無いことだ。それからアルコバレーノが対峙する二人を見ている。
それから、少年。少年の容姿はひどくあの頃の沢田綱吉と似ていた。少年は額に、彼のものとはまったく異なる、まばゆい煌々とした炎をともして、

骸は目を開けた。
「・・」
それから立ち上がって、素足で部屋を横切り、障子をあける。
「骸さーん!」
犬がぶんぶんと手を振っている。彼らに手を振り返して、深々と降る雪を見上げる。
大空は見えなかった。

あの子供は沢田綱吉の子供だろう。
けれど、けれど、沢田綱吉でない彼に骸は何の興味もないのだった。

「足は冷えませんか」
千種がいつのまにかそばにいて骸に尋ねる。
「平気ですよ」
さぁ、昼ご飯は雑煮でも作りましょうか、そう言うと子供たちが肉ー肉ー!と歓声をあげ始めた。
肉ばっかり食べてると犬のようになりますよ。
そういえば、なんれすか、それー!と犬がわめき、くすくすと凪が笑う。
骸は微笑んだ。
by kanae-r | 2007-04-20 01:03 | odile>reborn